がん再発予防のために、食生活を見直すことはとても大事です。告知前とまったく同じ食生活や生き方をしていると、がんの再発リスクは上がるとも言われています。

そこで、がん予防のために良いとされている食材や、完治・根治・寛解した人たちが取り組んでいる食生活などをまとめてみました。

登場する食材の数は多いですが、すべてを必ず食べなければならないという訳ではありません。好きな食材や減らせそうな調味料など、取り組みやすそうだなと思ったところからはじめてみてください

このページを読む前に

当ページでは「がん予防に良いとされている食材」や「がんを完治・根治・寛解させた人たちが取り組んでいる食事法」などをご紹介していますが、こちらは当ページの内容の出典や取り組むにあたっての注意点となります。これらを確認してから、先を読み進めてください。

出典

母と妻が乳がんになってから、がんに関する様々な本を読みました。その中でも特に役に立つと実感したのがこちらの6冊です。いずれも過去にベストセラーとなっていて、高評価レビューも数多くついています。

これら6冊を情報源として、当ページを作成しました。前向きになれる内容のものばかりですので、気になったタイトルがあったらぜひ読んでみてください。

標準治療をしたうえで取り組む

乳がんに限らず、どのようながんであっても、まずは標準治療を始めましょう。科学的根拠に基づいた最良の治療法が標準治療です。標準治療を行ったうえで、当ページの内容を実践するようにしてください。

もちろん標準治療と並行して当ページの内容に取り組んでも大丈夫ですが、特定の薬との相性がよくない食材(特にグレープフルーツ系)もありますので、主治医や薬剤師さんに食べてはいけない食材があるか確認しておきましょう。

※参考:乳がんの標準治療(国立がん研究センター)

厳しくしすぎない

食事や食材を厳しく制限すると、それがストレスとなってしまいます。せっかく健康のために行っていることがストレスになってしまっては良くないので、いきなり厳しく制限するのではなく、ストレスのない範囲で緩く続けやすい方法を見つけましょう

例えば、甘いものやしょっぱいものが大好きで毎日食べていたのであれば、毎日→週3回→週1回といったように徐々に減らしてみましょう。

また、いわゆるチートデイを作るのもリフレッシュできておすすめです。普段は野菜と果物中心の食生活にしておいて、月に1,2回だけ好きなものを食べていい日(=チードデイ)を作るようにすると、食べられないストレスを軽減できます。

ストレスは、がんのリスクを上げたり、がんの進行を進める可能性があるとされています。また、がんだけでなく、様々な病気の原因にもなるとされているため、がんになった後は特にストレスの少ない生活を心がけることが大切です。

※参考:ストレスはがん罹患のリスクが上昇(国立がん研究センター)

増やすべきもの

野菜・果物・魚類・豆類・発酵食品など。

がんに限らず、一般的に健康に良いとされているものを増やしましょう。がん予防・免疫力向上・腸内環境改善・生活習慣病予防など、様々な効果が見込めます。

野菜

アブラナ科・ネギ属・根菜・7色の野菜(赤系・橙系・黄色系・緑系・紫系・黒系・白系)など。

毎食の50%を野菜にできると理想的です。できれば無農薬やオーガニック野菜が良いとされていますが、普通の野菜よりも高額ですし、無理して探す必要はありません。できる範囲で取り組んでみてください。

※参考:アブラナ科野菜の摂取量が多いと乳がんになりにくい(国立がん研究センター)

アブラナ科 キャベツ・ブロッコリー・カリフラワーなど
ネギ属 にんにく・玉ねぎ・青ねぎなど
根菜 にんじん・大根・じゃがいもなど
赤色野菜 トマト・赤パプリカ・赤ピーマンなど
橙色野菜 にんじん・かぼちゃなど
黄色野菜 とうもろこし・ズッキーニ・パプリカなど
緑色野菜 ほうれんそう・小松菜・きゅうりなど
紫色野菜 なす・紫いも・赤しそなど
黒色野菜 じゃがいも・ごぼう・緑茶など
白色野菜 キャベツ・にんにく・セロリなど

果物

りんご・7色の果物(赤系・橙系・黄色系・緑系・紫系・黒系・白系)など。

前述の野菜との組み合わせで7色揃えられると理想的です。無農薬やオーガニック果物がより推奨されていますが、無理せずできる範囲で取り組んでみましょう。

※参考:野菜と果物をとる(科学的根拠に根ざしたがん予防ガイドライン)

りんご 抗酸化作用の強いファイトケミカルが豊富に含まれているので、皮ごと食べる
赤色果物 イチゴ・スイカ・サクランボなど
橙色果物 柿・オレンジ・グレープフルーツなど
黄色果物 ゴールドキウイ・レモン・パイナップルなど
緑色果物 グリーンキウイ・メロンなど
紫色果物 ブドウ・ザクロなど
黒色果物 ブラックベリー・ブルーベリーなど
白色果物 桃・梨・ライチなど

「まごわやさしいよ」食材

豆類・ごま類・わかめなどの海藻・野菜・魚・しいたけなどのきのこ類・いも類・ヨーグルト類の頭文字を取った食材です。

これらの食材は栄養バランスがよく、腸内環境改善や免疫力向上にもつながります。すでにご紹介している「野菜」以外の6つをまとめました。

豆類 まめ・豆腐・納豆・小豆など
良質なたんぱく質・カリウム・マグネシウムが豊富
ごま類 ごま・ナッツ・クルミ・アーモンドなど
良質なたんぱく質・食物繊維・カルシウムが豊富
海藻 わかめ・昆布・のり・ひじき・もずくなど
良質なカリウム・カルシウム・食物繊維が豊富
青魚 いわし・かつお・さば・さんまなど
良質なDHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)が豊富
きのこ類 しいたけ・まいたけ・えのき・しめじ・マッシュルームなど
免疫力を向上させる働きをするβグルカン(食物繊維の一種)が豊富
いも類 さといも・さつまいも・じゃがいもなど
良質な食物繊維が豊富
ヨーグルト類 ヨーグルト・豆乳ケフィア・乳酸菌飲料など
良質な乳酸菌が豊富

シンバイオティクス

プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせたものです。腸内環境が良くなり、免疫力向上に繋がります。

  • プロバイオティクス:ビフィズス菌・乳酸菌・納豆菌など、善玉菌そのものを含むもの(主に発酵食品)
  • プレバイオティクス:食物繊維・オリゴ糖など、善玉菌のエサとなって活性化を促すもの

※参考:発酵大豆食品の摂取量が多いと、進行乳がんの罹患リスクが低い(国立がん研究センター)

プロバイオティクス ヨーグルト・豆乳ケフィア・乳酸菌飲料・納豆・味噌・ぬか漬け・キムチ・酒かすなど
プレバイオティクス 野菜・果物・きのこ類・豆類・海藻など

体に良い油

オメガ3・オメガ9と呼ばれる種類の油は健康に良いとされています。コレステロールを下げる・脳機能を改善する・炎症を軽減するなどといった効果があります。

  • オメガ3:α-リノレン酸・EPA・DHAの3つ
  • オメガ9:オレイン酸・エルカ酸など
オメガ3 青魚・アマニ油・エゴマ油など
オメガ9 オリーブオイル・なたね油(キャノーラ油)など

未精製の穀類

玄米・キノア・オーツ・ライ麦・全粒粉など。ビタミン・ミネラル・食物繊維などの栄養素が豊富に含まれています。

きれいな水

ミネラルウォーター・浄水器の水など、きれいな水を毎日しっかり飲むことも大事です。体重1kgあたり30~40mlが目安になります。

40kg 1.2リットル~
50kg 1.5リットル~
60kg 1.8リットル~
70kg 2.1リットル~
80kg 2.4リットル~

デザイナーフーズピラミッド

デザイナーフーズピラミッド
画像出典:がん予防効果が期待されるデザイナーフーズとは?(はくばく)

デザイナーフーズピラミッドとは、1990年代にアメリカ国立がん研究所が発表したがん予防の効果が高いと考えられる40種類の食材のことを言います。

重要度順に3つのグループに分けられていて、1番上のグループ(にんにく・キャベツなど)が特に予防の可能性が高いとされています。なお、同じグループ内の並び順は重要度とは関係がありません。

デザイナーフーズピラミッドに出てくる食材をバランスよく選ぶことで、がん予防や生活習慣病予防の効果が期待できます。

そのほか

上記の各項目以外で出典元の書籍に登場したものです。

カテキン 抗酸化作用・抗ウイルス作用・抗ガン作用
微量ミネラル 抗酸化作用・糖脂質代謝作用・生活習慣病予防
青汁 ビタミン・ミネラル・食物繊維などの栄養素が含まれている
高麗人参 疲労回復・ストレス軽減・免疫力向上
ケトン食 糖質(炭水化物)を抑えて、脂肪を増やす食事。MCTオイル(中鎖脂肪酸油)を使ってケトン体を増やす。

減らすべきもの

塩・砂糖・肉・精製食品・アルコールなど。

いずれも一般的に健康に良くないとされているものです。がんだけでなく、様々な病気のリスクを上げる要素となっています。

※参考:野菜と果物をとる(科学的根拠に根ざしたがん予防ガイドライン)

塩分(ナトリウム)を摂りすぎると胃がん・高血圧・動脈硬化などの病気リスクが上がります。

味付けを薄くする、塩辛い食品を減らす、ナトリウムの排出を促すカリウム(野菜果物)を多くとるなどの対策をしましょう。

※参考:塩蔵食品はがんにリスク(国立がん研究センター)

砂糖

砂糖(糖質)を摂りすぎると糖尿病や生活習慣病などの病気リスクが上がります。また、肥満や体重増加は乳がん・大腸がん・肝臓がんなど、多くの種類のがんリスクを高めます。

ジュースを水やお茶に変える、お菓子の代わりに果物を食べる、砂糖の入っていない食品を選ぶなどの対策をしましょう。

※参考:肥満は再発リスクを高める(患者さんのための乳がん診療ガイドライン)

赤肉と加工肉(ハム・ベーコン・ソーセージ・ウインナーなど)を摂りすぎると大腸がんや動脈硬化などのリスクが上がります。また、肥満や体重増加もがんの再発リスクを高めます。

和食を増やす・鶏肉をメインにする・脂身部分を控えるなどの対策をしましょう。

※参考:総カロリーを制限して肥満を避ける(患者さんのための乳がん診療ガイドライン)

精製食品

いわゆる「白い食べ物」です。精製された食品には、栄養素が少ない・血糖値を急激に上昇させる・腸内環境を悪化させるなどのデメリットがあります。

日々の食卓に欠かせない食塩や白米などが含まれますが、以下のように未精製のものに置き換えることで対策が可能です。

  • 白米→玄米
  • 食塩→天然塩・岩塩
  • 砂糖→黒糖・オリゴ糖・はちみつ・メープル
  • 小麦粉→全粒粉

アルコール

乳がんをはじめ、様々ながんで飲酒がリスクを上げるという研究結果が出ています。

とはいえ、禁酒がストレスになってしまうのもよくないので、飲みすぎないこと・節度ある飲酒を守ることが大事です。

※参考:アルコール飲料が乳がん発症リスクを高める(患者さんのための乳がん診療ガイドライン)

冷たい飲食物・熱い飲食物

冷たい飲み物の飲みすぎや、冷たい食べ物(アイスクリーム・かき氷など)の食べすぎにも注意が必要です。

胃腸に負担がかかって腸内環境の悪化を招くほか、体温が下がることで免疫力を低下させてしまう可能性があります。

一方で、熱い飲み物と食べ物にも注意が必要です。熱いまま食べることで食道がんや食道炎のリスクがあがります。

熱々で食べるのがおいしいものもありますが、少し冷ましてから口にするようにしましょう。

※参考:熱い飲み物や食べ物は冷ましてから(科学的根拠に根ざしたがん予防ガイドライン)

健康に良い食事法

前述の様々な食材を取り入れた食事法や、食事の際の心がけなどをまとめました。

和食

五大栄養素(糖質・脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラル)をバランスよく取れるのが和食です。古くから日本で食べ続けられてきたものなので、日本人の体に合っているとも考えられています。

前述の各食材と和食の一汁二菜を意識することで、栄養バランスの整った健康的な食事となります。なお、洋食と比べると塩分が多くなりがちなので、塩分も意識して献立を考えてみましょう。

※参考:欧米型食事パターンで乳がんリスクが上昇(国立がん研究センター)

地中海食

和食と比べて糖質や飽和脂肪酸が多い洋食ですが、地中海食は別です。地中海沿岸諸国の伝統的な食習慣のことを地中海食と言います。

乳がん・大腸がん・心筋梗塞などのリスクを減らすと考えられていて、和食と同様に健康的な食事内容となっています。具体的な食事内容は次の通りです。

※参考:乳がんのリスクを減らす地中海食(PDF・聖マリアンナ医科大学附属研究所)

月に数回 赤身肉・お菓子・デザート
週に数回 卵・鶏肉・魚介類
毎日 チーズ・ヨーグルト・オリーブオイル・野菜・果物・豆類・ナッツ・パン・パスタ・全粒穀物・イモ類
飲み物 水・少量のワイン

断食

断食(ファスティング)をすることで免疫力向上が見込めます。24時間の断食を行うのは大変ですが、夕飯と翌朝の朝食の間隔を12時間以上開けるだけのプチ断食なら気軽に始められます。

例えば「19時に夕食を食べ終えて、翌朝7時までは何も食べない」といった形です。夜間の絶食時間が13時間以上だと乳がんの再発リスクが下がるという研究結果も出ていますので、積極的に取り入れましょう。

調理方法

「焼く・揚げる・炒める」よりも「煮る・蒸す・茹でる」の方が健康にいいとされています。

肥満や糖尿病のリスクを高めるAGE(終末糖化産物)の発生が少ないためです。調理法を選べる食材でしたら「煮る・蒸す・茹でる」をちょっと優先してみましょう。

食に感謝する

感謝の気持ちを持つことで、幸せホルモン(セロトニン・オキシトシンなど)が分泌されます。幸せホルモンには免疫力向上やストレス緩和などの効果があり、気持ちも前向きになれます。

私たちが食前と食後に使っている「いただきます」と「ごちそうさま」はもともと感謝を表す言葉です。これまでよりもさらに感謝の気持ちを込めて言うようにしましょう。

  • いただきます:「自然の恵みである食材」と「食事に関わった人々」への感謝
  • ごちそうさま:食事にかかわったすべての人々(料理した人・野菜を育てた人・魚を穫った人など)への感謝