メリット デメリット
エネルギー供給の安定性向上 初期コストの高さ
送配電ロスの削減 管理の複雑化
再生可能エネルギーの活用 発電効率の低さ
地域経済の活性化 不安定な電力供給
エネルギー自給率の向上 電力網への影響
柔軟性と適応性 技術的課題
環境負荷の軽減 規模の経済の欠如
停電リスクの分散 土地やスペースの制約
エネルギー民主化 エネルギーの信頼性不足
ピーク負荷の削減 政策や規制の影響

分散型電源のメリット

上の表に出てきた各メリットについてかんたんに解説します。

エネルギー供給の安定性向上

分散型電源は、地域ごとに小規模な発電所が配置されるため、災害やシステム障害の影響を受けにくいという利点があります。例えば、中央集約型の大規模発電所が停止すると広範囲にわたる停電が発生しますが、分散型電源の場合、障害が発生したとしても影響は限定的で、他の地域の電源で補完できます。また、送電線の障害による停電リスクも低減でき、災害時や緊急時においてエネルギー供給の信頼性が向上します。この特性により、エネルギーの安定供給が求められる病院や公共施設、工場などにも適しています。

送配電ロスの削減

分散型電源では、発電所が消費地の近くに配置されるため、電力を長距離輸送する際に発生する送配電ロスを大幅に削減できます。電力は送電線を通る際に熱としてエネルギーが失われますが、分散型電源なら送電距離が短縮され、この損失を最小限に抑えられます。特に都市部や離島などでは、送電インフラの負担軽減にもつながります。また、送配電ロスの削減はエネルギー効率の向上にも寄与し、エネルギー全体の有効利用が可能になります。

再生可能エネルギーの活用

分散型電源は、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを取り入れやすい特徴があります。これにより、化石燃料に依存せずにクリーンエネルギーの普及を促進できます。特に、太陽光や風力は小規模な設置でも運用可能で、住宅や事業所レベルでの導入が進んでいます。さらに、地域特性に応じたエネルギー源を選択できるため、自然環境を最大限活用する仕組みが整えられます。これにより、地球温暖化防止やCO2排出量削減にも寄与します。

地域経済の活性化

分散型電源の導入は、地域ごとのエネルギープロジェクトを支援し、地域経済を活性化させます。たとえば、地域住民が主体となる発電事業を立ち上げることで、雇用の創出や新たな産業基盤の形成が期待されます。さらに、地元で生産された電力を地域内で消費することで、地域内経済循環が強化されます。これにより、大都市への依存度が低下し、地方の持続可能な発展をサポートします。

エネルギー自給率の向上

分散型電源は、地域内でのエネルギー生産を可能にするため、エネルギー自給率を向上させます。特に、エネルギーの多くを輸入に依存している国や地域にとって、分散型電源はエネルギー安全保障の強化に直結します。地元のエネルギー源を活用することで、輸送コストや輸入リスクを軽減でき、エネルギー供給の独立性を高める効果が期待されます。

柔軟性と適応性

分散型電源は、小規模でモジュール化されたシステムであるため、エネルギー需要の変化に柔軟に対応できます。新たな需要が発生した場合でも、比較的小規模な設備を迅速に設置することで対応可能です。また、需要が減少した場合でも設備の縮小が容易で、エネルギー供給の効率化を図ることができます。この柔軟性により、地域やコミュニティごとの特性に合わせたカスタマイズが可能です。

環境負荷の軽減

分散型電源は、小規模で効率的な発電方式を採用するため、従来の大規模発電所に比べて環境への負荷が軽減されます。特に再生可能エネルギーを利用する場合、化石燃料を燃焼させる必要がなく、大気汚染や温室効果ガスの排出が大幅に削減されます。さらに、分散型電源の多くは地域のエネルギー需要に直接応える形で稼働するため、エネルギー浪費を最小限に抑えられます。

停電リスクの分散

中央集約型の電力システムでは、大規模な障害が発生すると広範囲で停電が発生するリスクがありますが、分散型電源では障害の影響が局所的にとどまります。例えば、台風や地震といった自然災害が発生した場合でも、分散型電源が稼働することで、最低限のエネルギー供給を維持できる可能性があります。このため、災害時の電力供給が途絶えるリスクを低減する効果があります。

エネルギー民主化

分散型電源は、エネルギー生産の主導権を地域や個人に分散させることを可能にします。これにより、従来の中央集約型エネルギー供給構造に代わる、新しい形のエネルギー社会が形成されます。たとえば、個人や企業が自家発電を行い、余剰電力を地域電力網に供給する仕組みを通じて、エネルギーの所有権と管理権を分散化する動きが進みます。

ピーク負荷の削減

分散型電源は、エネルギー需要が高まるピーク時間帯に補助的に稼働することで、電力システム全体の負荷を平準化します。これにより、ピーク時の過剰な発電設備投資が不要になり、コストの削減が可能です。また、需要と供給が近い環境でエネルギーがやり取りされるため、システム全体の安定性が向上します。

分散型電源のデメリット

上の表に出てきた各デメリットについてかんたんに解説します。

初期コストの高さ

分散型電源を導入する際には、設備の設置や電力網の整備に多額の初期投資が必要です。例えば、太陽光発電パネルや風力タービンの設置費用は個人や企業にとって大きな負担となることがあります。また、既存の中央集約型システムと並行して運用する場合、送配電網の改修や制御システムのアップグレードが必要になることもあります。初期コストが高いため、導入に対する心理的・経済的なハードルが上がる点が課題です。

管理の複雑化

分散型電源では、小規模な電源が各地に設置されるため、運用・保守の管理が非常に複雑になります。特に、多数の電源を統合して効率よく運用するには、高度な制御技術や監視システムが必要です。また、発電量の予測が難しい再生可能エネルギーを活用する場合、電力需給のバランスを取るための調整が重要となり、管理負担が増大します。

発電効率の低さ

分散型電源は小規模であるため、大規模発電所に比べて発電効率が低い場合があります。特に、内燃機関や小型タービンを使用する発電設備では、エネルギーの変換効率が低下することがあります。また、個々の設備が単独で稼働する際には、大規模発電所のような効率的なエネルギー運用が困難になるため、全体的なエネルギー効率の低下が懸念されます。

不安定な電力供給

太陽光や風力などの再生可能エネルギーを主体とする分散型電源は、天候や自然条件に強く依存するため、供給が安定しない場合があります。例えば、曇りの日や風が弱い日は発電量が大幅に減少し、需要を満たすのが難しくなる可能性があります。この不安定さを補うためには、蓄電池や補助的な電力供給源が必要となり、コストや管理の課題が生じます。

電力網への影響

分散型電源が増加すると、既存の送配電網に調整が必要になります。特に、電力網に双方向の電力フローが発生する場合、従来の一方向型の送電システムでは対応が困難になることがあります。また、電圧の変動や周波数の安定化が課題となり、電力網全体の信頼性を確保するための追加的な設備投資が必要です。

技術的課題

分散型電源の効率的な運用には、蓄電技術や電力の需給調整技術が不可欠です。しかし、これらの技術はまだ発展途上にあり、十分な性能やコスト効率を実現できていない場合があります。例えば、大容量の蓄電池は高価であり、耐久性や充放電サイクルの制限が問題となることがあります。また、分散型電源同士や中央電源との連携を調整するための制御システムも進化が必要です。

規模の経済の欠如

分散型電源は小規模で運用されるため、大規模発電所のようなコスト削減効果(規模の経済)が得られにくい点が課題です。たとえば、大規模発電所では燃料調達や発電設備の運用効率が高いため、コストを抑えやすいのに対し、分散型電源では一つひとつの設備が独立しているため、コストが高くなりやすい傾向があります。

土地やスペースの制約

分散型電源の設置には一定の土地やスペースが必要です。特に都市部では、土地の価格が高く、十分な設置スペースを確保するのが困難な場合があります。また、再生可能エネルギーの設備は広大な土地を必要とすることが多く、農地や自然環境との競合が問題になることもあります。このため、設置場所の選定が重要な課題となります。

エネルギーの信頼性不足

分散型電源だけでは、需要変動に迅速に対応することが難しい場合があります。特に、夜間や天候不良時に再生可能エネルギーの発電量が不足した場合、エネルギーの信頼性が損なわれる可能性があります。このような状況では、バックアップ電源やエネルギー貯蔵システムが必要となり、結果として全体の運用コストが上昇します。

政策や規制の影響

分散型電源の導入には、政府の政策や規制が大きく影響します。一部の国や地域では、既存のエネルギーインフラや電力市場の構造が分散型電源の普及を妨げている場合があります。また、補助金や税制優遇がなければ、個人や企業が分散型電源を導入するインセンティブが低下する可能性もあります。このため、政策の整備が進まないと導入が難しい状況が続く可能性があります。

みんなの意見

賛成意見 反対意見
災害時などの対応において、分散型電源は優れたシステムだと思います。震災等で送電網が寸断された際でも、地元に電源があれば電気を使うことができるのは助かるはずです。

そして、各自治体が災害時の分散発電も視野に入れて電源整備を行うことは、緊急時の電源供給を電力会社に任せきりにするのでなく、個々の自治体が、災害全体に対してどこまで自己責任でリソースを割いておくのかという政策論議を促し、災害全体に対する備えが進むことも考えられそうです。
今の電力会社は供給責任を負っていますが、分散型電源では責任の所在がどこにあるのか曖昧になりそうです。

電力会社のみが責任を負うというのなら、極端な話、電力会社は他の小口供給者の供給がゼロであることを想定し、分散型電源が導入されていないのと同等の供給余力を持っておかなければならないことになりそうです。となると実質的に設備過剰となってしまい、何のための分散型電源なのかわからなくなってしまいます。

かといって小口供給者に責任を負わせるとなると、参入しようという動きが鈍くなりそうで、その責任の所在を明確にできない限り、私は反対です。
分散型電源は、電力消費地の近くに発電設備があることで、送電によるロスがすくないことや、災害などの緊急時にも電力供給がある程度見込めるという点が良いところだと思います。電力をせっかく作っても、送電時にロスが多いのでは非常に非効率なエネルギー供給となってしまいます。

また、世界的に見ても、地震が多い地域に国のほぼすべてが入っているという日本の地域性を考えても、非常時にどれだけ電力供給ができるか、たとえ落ちても復旧を早く進めることができるかということはとても大切です。

このような必要性に、分散型電源は応えることができるシステムであるといえます。
分散型電源のデメリットとして、発電装置の発電効率が大規模なものと比べて落ちてしまうという点や、初期投資や運転管理に資金的にも人材的にも労力を注がねばならないという点があげられると思います。

電力会社が所有しているような大規模発電装置は、大掛かりであるからこそ可能になった発電効率をもちあわせており、また専門家も多く存在しているため、運転に際しての安心もあります。

分散型電源は、企業や家庭での設置運用が主なものとなり、初期投資に資金投入が必要なだけでなく、安全な発電をしていくために管理が必要となります。そこに割く労力が確保できるかが問題です。