メリット デメリット
エネルギー効率の向上 初期投資コストが高い
CO2排出量の削減 設置スペースの確保が必要
エネルギーコストの削減 燃料供給への依存
エネルギー自給自足 メンテナンスコスト
熱利用の多様性 熱利用の制約
ピーク電力の削減 適切な規模が必要
停電時の電力供給 環境への影響
地産地消エネルギー 技術的な複雑さ
燃料選択肢の多様性 電力と熱の需要バランス
温室効果ガス削減への貢献 長期的な経済リスク

コージェネレーションのメリット

上の表に出てきた各メリットについてかんたんに解説します。

エネルギー効率の向上

コージェネレーションシステムは、発電過程で発生する熱エネルギーを利用することで、エネルギーの利用効率を飛躍的に向上させます。従来の発電方法では、発電時に生じる熱エネルギーの大部分が大気中に放散され、全体の効率は30~40%程度にとどまります。しかし、コージェネレーションではこの熱を回収し、暖房や給湯、プロセス熱などとして活用するため、システム全体のエネルギー効率が70~90%に達します。これにより、同じ燃料量でより多くのエネルギーを得られるため、燃料資源の節約やランニングコストの削減につながります。また、高効率であることは、エネルギー供給の安定性にも寄与します。

CO2排出量の削減

コージェネレーションは燃料の利用効率が高いため、同じエネルギー量を得る際の二酸化炭素(CO2)排出量が削減されます。従来型の分散発電システムや地域冷暖房では、発電と熱供給を別々に行うため、燃料消費量が多く、CO2排出量も相応に増加します。一方で、コージェネレーションは発電と熱供給を同時に行い、燃料消費量を大幅に削減するため、温室効果ガスの排出削減に大きく貢献します。また、再生可能エネルギー由来の燃料(例:バイオマス)を用いることで、カーボンニュートラルな運用も可能となり、地球温暖化対策においても重要な役割を果たします。

エネルギーコストの削減

コージェネレーションの高効率なエネルギー利用により、燃料コストや外部電力購入費を抑えることができます。特に、大規模施設や産業用プラントでは、熱と電力を多量に必要とするため、コージェネレーションの導入効果が顕著に現れます。また、発電時に余剰電力を売電することが可能な場合、追加収入が得られる点も大きなメリットです。初期投資は高額であるものの、運用を通じて得られるコスト削減効果や収益により、長期的には投資回収が可能となります。ただし、設備の適切な運用が必要であり、需要パターンに応じた最適な設計が求められます。

エネルギー自給自足

コージェネレーションは、エネルギー供給の自立性を高めることが可能です。発電と熱供給を施設内や地域内で行うため、外部の電力網や熱供給ネットワークに対する依存を軽減します。これにより、電力網のトラブルや燃料供給の問題が発生した場合でも、自施設でエネルギーを供給し続けることが可能です。特に災害時や停電時には、エネルギー自給システムとしての役割が顕著に発揮され、地域社会や産業活動の継続性を支える重要なインフラとなります。

熱利用の多様性

コージェネレーションで生じる熱エネルギーは、さまざまな用途に利用できます。冬季の暖房や給湯、工業プロセスの加熱に加えて、夏季には吸収式冷凍機を用いて冷房エネルギーとしても活用可能です。こうした多用途性により、年間を通じてエネルギーの有効活用が実現します。また、産業分野では、化学反応や蒸気駆動の機械など、高温熱エネルギーを必要とする工程にも適応できるため、エネルギー利用の幅が広がります。この柔軟性が、施設ごとの特性に応じた運用を可能にします。

ピーク電力の削減

電力需要がピークに達する時間帯には、電力網への負担が増大し、停電リスクや電力料金の上昇が懸念されます。コージェネレーションシステムを利用することで、需要のピークを部分的にカバーできるため、電力網の安定性を向上させる効果があります。また、ピークカットにより、契約電力の削減が可能となり、施設運営コストの低減にも寄与します。これにより、需要と供給のバランスがとれたエネルギー供給が実現します。

停電時の電力供給

コージェネレーションは独立系の発電システムとして機能するため、停電時にも電力供給を継続できます。これは特に、医療施設やデータセンター、産業プラントなど、電力の安定供給が不可欠な場所において重要です。非常用電源としての役割を果たすことで、業務の中断や損失を防ぎます。また、エネルギーの地産地消という観点からも、地域社会における災害対応能力の向上に寄与します。

地産地消エネルギー

コージェネレーションは、地域内でエネルギーを生産・消費する「地産地消」の考え方を実現します。これにより、地域のエネルギー自立が進み、外部からの電力供給に依存する割合を減少させます。また、地域での燃料調達や設備運用により、地元経済の活性化や雇用創出にも貢献します。バイオマスなどの地域資源を活用すれば、さらに地域密着型のエネルギー供給モデルが形成されます。

燃料選択肢の多様性

コージェネレーションシステムは、さまざまな燃料で稼働可能です。主に使用される天然ガスに加えて、バイオマス、廃棄物由来燃料、さらには水素など、環境負荷の低い燃料も利用できます。これにより、エネルギー供給の柔軟性が高まり、燃料価格の変動リスクや供給途絶リスクを軽減できます。また、燃料選択肢の多様性は、各地域や施設の特性に応じた最適なエネルギー供給方法の選定を可能にします。

温室効果ガス削減への貢献

コージェネレーションは、燃料の高効率利用や再生可能エネルギーとの組み合わせにより、温室効果ガス排出削減に大きく寄与します。例えば、バイオマス燃料を使用する場合、燃料の燃焼で発生するCO2が植物の成長過程で吸収されるため、実質的なCO2排出量がゼロとなる「カーボンニュートラル」な運用が可能です。さらに、廃棄物由来の燃料を利用することで、廃棄物の減量とエネルギー供給の両立も実現します。

コージェネレーションのデメリット

上の表に出てきた各デメリットについてかんたんに解説します。

初期投資コストが高い

コージェネレーションの導入には、高額な初期投資が必要です。発電設備、熱交換機、制御システムなどの設置費用が発生し、小規模施設や中小企業にとっては大きな負担となります。また、建物や施設の設計に合わせたシステム構築が求められる場合、設計費用やカスタマイズ費用がさらに上乗せされます。これにより、短期的な投資回収が難しいケースも多く、導入を検討する際には長期的な視点でコスト効果を評価する必要があります。政府や自治体の補助金や税制優遇措置を活用することで、初期費用を軽減する方法もありますが、すべてのケースで適用できるわけではありません。

設置スペースの確保が必要

コージェネレーションシステムの導入には、発電機、熱交換器、制御装置などを設置するためのスペースが必要です。特に都市部や既存施設では、十分な設置場所が確保できない場合があります。また、設置スペースが限られていると、機器の配置やメンテナンス性が制約されることがあり、長期的な運用効率にも影響を与える可能性があります。このため、導入を検討する際には、設備のコンパクト化や既存スペースの活用方法を慎重に計画する必要があります。さらに、防音対策や排気処理設備など、環境への配慮も設置スペースの要件に影響します。

燃料供給への依存

コージェネレーションシステムは、主に天然ガスやバイオマスなどの燃料を使用しますが、これらの安定供給が確保されなければ運用に支障をきたします。特に、燃料価格が市場の影響を受けやすい場合、運用コストが予想以上に高くなるリスクがあります。また、燃料の供給が途絶した場合、エネルギー供給自体が停止するため、燃料供給契約やバックアッププランの整備が重要です。再生可能エネルギーの普及が進む中で、燃料の選択肢を広げることが求められていますが、燃料の切り替えには設備の改造や追加費用が発生することもあります。

メンテナンスコスト

コージェネレーションシステムの運用には、定期的なメンテナンスが必要であり、そのためのコストが発生します。特に、発電機や熱交換器は運転頻度が高いため、摩耗や劣化が進みやすく、定期的な部品交換や点検が不可欠です。また、システムの性能を最適に保つためには、専門技術者による保守作業が求められるため、メンテナンス契約や人件費が運用コストに含まれます。これらの費用が見落とされると、運用開始後に予想外の支出が発生し、経済性に影響を与える可能性があります。

熱利用の制約

コージェネレーションでは発電時に生じる熱エネルギーを利用しますが、熱需要がない場合、そのエネルギーが無駄になる可能性があります。例えば、夏季などの暖房需要が少ない季節では、発生した熱を効果的に活用できず、システム全体の効率が低下します。この問題を回避するためには、吸収式冷凍機を導入して冷房用途に熱を利用する方法がありますが、これにも追加コストが発生します。熱と電力の需要バランスが大きく変動する施設では、適切な運用計画が求められます。

適切な規模が必要

コージェネレーションの経済性を最大化するには、施設の規模やエネルギー需要に適したシステム設計が必要です。特に、小規模施設では熱や電力の需要が十分でない場合、投資コストに対して運用効果が低くなる可能性があります。逆に、大規模施設では設備が適切に運用されなければ、効率が低下するリスクがあります。このように、需要に応じた適切な規模とシステムの選定が重要であり、不適切な規模での導入は投資回収に時間がかかる原因となります。

環境への影響

コージェネレーションは効率的なエネルギー利用を可能にしますが、燃料の種類によってはCO2や他の汚染物質の排出が発生する可能性があります。特に、石油や石炭を燃料とする場合、環境への負荷が大きくなるため、再生可能エネルギーやクリーン燃料の活用が推奨されます。また、設備からの騒音や排気ガスも地域住民や環境に影響を及ぼす可能性があるため、十分な環境対策が求められます。これには、防音設備や排ガス処理装置の導入など、追加コストが必要です。

技術的な複雑さ

コージェネレーションシステムは、高度な技術を要する複雑な設備で構成されており、設計や運用には専門的な知識が必要です。特に、電力と熱の需要バランスを最適化するための制御システムの運用やトラブル対応には、熟練した技術者が必要です。また、新技術や燃料の導入に伴う設備の改良には、さらに高度な専門知識が求められ、これが導入のハードルを上げる要因となっています。

電力と熱の需要バランス

コージェネレーションは電力と熱を同時に供給するシステムであるため、これらの需要が一致しない場合、エネルギー利用効率が低下します。例えば、電力需要が多いが熱需要が少ない場合やその逆の場合、発生する余剰エネルギーが無駄になる可能性があります。この問題を解決するには、熱ストレージシステムの導入や余剰電力の売電などが必要ですが、これにはさらなるコストや技術的課題が伴います。

長期的な経済リスク

コージェネレーションシステムの運用は、燃料価格の変動や政策規制の変更に影響を受けやすい点が課題です。例えば、燃料価格の急上昇や再生可能エネルギーの普及促進政策により、相対的な競争力が低下する可能性があります。また、導入時の技術やシステムが長期的に陳腐化するリスクもあり、これに対応するためには設備の更新や追加投資が必要となります。これらのリスクを適切に管理することが、長期的な運用成功の鍵となります。

みんなの意見

賛成意見 反対意見
東日本大震災の時、多くの地域が停電となり、街はパニック状態に陥りました。その中でコージェネレーションを備えたビルやホテルは停電にならず、大きな災害のなかでも重要な機能を果たしました。

コージェネレーションはこのように災害時のリスク分散という意味で有効です。

更に最近では大規模な工業団地や再開発地区で地区全体の電力をまかなうコージェネレーションシステムも導入され、遠距離通電によるエネルギーロスを解消しています。
コージェネレーションの熱源はオイルまたはガスです。従って基本的には火力発電と同じシステムです。原発事故以来全国の原子力発電がストップして火力発電に切り替えた結果、電力会社は大幅な赤字経営に追い込まれています。

すなわち全てを火力発電に頼れば、電気料金を値上げしなければ採算はとれません。

更に火力発電はCO2を発生するので、地球温暖化問題に対しても推奨されるエネルギーシステムではありません。そのため、同じようなシステムを用いているコージェネレーションシステムは主流にはなりえないでしょう。
工場などではあらゆる業種で熱を排出しています。家庭でも必要とされる電気に対し光熱費は大きなウェイトを占めます。工場などの場合、家庭に比べて熱利用がしやすいという場面もあります。

面白いと思う事例がマイナスの熱エネルギーを利用する場合で、北海道でコンピューターサーバーの冷却に外気を利用するというものです。

これはサーバー運営に必要な電気代の何割かが冷却用のエアコンによるものという結果を受け、冷たい北海道の外気を利用したという事です。
コージェネレーションのデメリットはそのコストです。確かに熱の再利用によって燃料コストは節約できるのですが、まずその機械にコストが掛かるのです。

これは熱源に合わせて設計する必要がある為に各工場ごとのワンオフになりやすいのです。

掛けたコストに対してそれだけのメリットが引き出せるかというと難しいのが現状です。業務形態や立地によっても条件が変わりますし、それを検討する更にコストが掛かる事になります。

その他にも回収した熱源を何に使うかという問題やその機械に場所を取られてしまう問題も起こります。
通常の火力発電などの発電機は、電気を生み出すのに多くのエネルギーが排熱として無駄になっているのに対して、コージェネレーションはその熱をエネルギーとして活用するので、効率が良く、トータルで考えるとコストが削減できます。

石油やガスなどの貴重な天然資源を節約することにもつながり、別で熱を生み出すための燃料が節約されることになるので、省エネでエコにもなります。ですから、多く取り入れられるほどいいことだと思います。
熱回収をきちんと行えるシステムを整えるのに、初期費用やメンテナンスが必要になるのは問題です。また、通常の発電システムより故障や不具合が生じる率が高いので、家庭に取り入れるには、メンテナンスなどが面倒になります。

また、使用する電気と熱のバランスによっては、せっかく回収できる分の熱が無駄になり、効率が良くならないという場合もあります。特に業務用では、常時熱を利用できる環境でない場合、効率化や節約にならないこともよくあります。