メリット デメリット
関税削減・撤廃 国内産業への悪影響
市場アクセスの向上 貿易依存度の上昇
経済成長の促進 格差の拡大
消費者の選択肢増加 食品安全性の懸念
企業間競争の促進 雇用喪失の可能性
技術移転の促進 規制緩和の圧力
地域経済の発展 主権の侵害
輸出主導型経済の促進 中小企業への影響
サプライチェーンの効率化 文化的影響
国際関係の強化 不均衡な利益配分

FTAのメリット

上の表に出てきた各メリットについてかんたんに解説します。

関税削減・撤廃

FTAの最大のメリットの一つが、加盟国間での関税が削減または撤廃されることです。関税とは輸出入品に課される税金であり、これが減ることで貿易コストが低下します。その結果、企業は自国製品を他国により競争力のある価格で販売でき、消費者は輸入品をより安価に購入できます。また、原材料の調達コストも下がるため、生産コストが抑えられ、製品価格の引き下げや利益率の向上に寄与します。特に製造業や農産品輸出国にとっては大きな恩恵があります。

市場アクセスの向上

FTAにより、加盟国間で非関税障壁が撤廃されることで市場アクセスが向上します。非関税障壁には、輸入制限や厳しい規制が含まれます。これらの障壁がなくなると、企業が新たな市場に参入しやすくなります。特に中小企業にとっては、新市場への参入は売上増加の大きなチャンスです。また、自由貿易が進むことで、地域間での経済的なつながりが強化され、企業がグローバルなサプライチェーンを構築する際にもメリットがあります。

経済成長の促進

FTAによる貿易拡大は、GDPの成長を促します。各国が得意とする分野での貿易が増え、競争力が高まるため、生産性が向上します。また、貿易収益が増加することで政府の財源も潤い、インフラや教育などの投資が可能になります。これにより、経済の好循環が生まれます。特に、経済規模が小さい国にとっては、FTAが他国との連携を強化するための重要な手段となります。

消費者の選択肢増加

FTAは輸入品の種類を増やし、消費者に多様な選択肢を提供します。例えば、食品、衣料品、電子機器などのカテゴリーで、質の高い商品や最新の製品が容易に入手できるようになります。また、輸入品が増えることで競争が激化し、価格が下がる可能性があります。結果として、消費者はより良い商品をより安価に購入でき、生活の質が向上します。

企業間競争の促進

FTAにより、国内企業は外国企業との競争にさらされることになります。この競争は、企業にイノベーションや効率性の向上を促すきっかけとなります。また、国際市場への参入機会が増えることで、企業は成長戦略を再構築し、より競争力の高い製品やサービスを提供するようになります。このような競争環境は、長期的には産業全体の発展に寄与します。

技術移転の促進

FTAに基づく経済連携は、技術移転を促進する重要な役割を果たします。外国企業が現地で事業を展開する際、最新技術やノウハウが現地企業に伝わることがあります。また、国際的な共同研究や技術提携が進むことで、新たな産業技術の開発が促されます。これにより、国内産業の技術力が向上し、国際競争力が強化されます。

地域経済の発展

FTAは特定の地域や産業の成長を促進する役割を果たします。例えば、農業や製造業が盛んな地域では、FTAを通じて輸出が増加することで雇用が拡大し、地域経済が活性化します。また、FTAによる投資誘致により、インフラ整備や新たな事業機会が生まれます。これにより、地域格差の是正にも寄与する場合があります。

輸出主導型経済の促進

FTAによる関税削減や市場開放は、輸出主導型の経済成長を可能にします。自国で生産した製品を低いコストで他国に販売できるため、輸出量が増加し、国際市場での競争力が向上します。特に、製造業や農業のような輸出志向産業にとっては大きなメリットがあります。このような輸出主導型の成長は、国家全体の経済安定にも寄与します。

サプライチェーンの効率化

FTAは国境を越えた物流や生産プロセスを効率化します。例えば、原材料を低関税または無関税で輸入できるため、製品の生産コストを削減できます。また、FTAに基づく共通規格の導入により、輸出入手続きが簡素化され、サプライチェーン全体の効率が向上します。これにより、企業はより迅速かつ安価に商品を市場に供給できるようになります。

国際関係の強化

FTAは経済的なつながりを深めるだけでなく、政治的な関係も強化します。加盟国間での経済的相互依存が高まることで、対立を防ぎ、協調的な関係を築きやすくなります。また、FTA交渉の過程で、加盟国間での対話や交流が進むため、互いの信頼関係が深まる傾向があります。これにより、国際社会での安定と平和の実現にも寄与します。

FTAのデメリット

上の表に出てきた各デメリットについてかんたんに解説します。

国内産業への悪影響

FTAによる関税撤廃や市場開放は、競争力の低い国内産業に大きな打撃を与える可能性があります。特に、海外から安価な製品が大量に輸入される場合、国内の中小企業や伝統産業が圧迫されることがあります。例えば、農業や繊維産業などがその典型例です。こうした業界では、価格競争に耐えられずに事業縮小や倒産が相次ぎ、地域経済の衰退や雇用の喪失が懸念されます。このような影響を緩和するためには、FTA締結時に特定産業への保護措置や補助金が求められますが、それでも全ての影響を防ぐことは難しいです。

貿易依存度の上昇

FTAにより、特定国との貿易量が増加することで、その国に依存するリスクが高まります。例えば、一国の経済状況や政策変更が原因で輸出入が停滞した場合、自国の経済に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、FTAによって多国間の貿易協定よりも一部の国との二国間協定が優先される場合、地域全体の貿易バランスが崩れる恐れがあります。貿易依存度が高まると、外的要因による経済的な不安定性が増し、長期的なリスク管理が必要となります。

格差の拡大

FTAによる利益は、全ての国民や企業に均等に分配されるわけではありません。特に国際競争力を持つ大企業や輸出志向の産業は恩恵を受けやすい一方で、輸入競争にさらされる中小企業や一部の産業は不利益を被ります。また、都市部と地方の格差が広がることも問題です。FTAによる恩恵を享受できる産業が特定の地域に集中する場合、他の地域が取り残され、経済的な不均衡がさらに拡大する可能性があります。

食品安全性の懸念

FTAによる輸入品の増加は、食品の安全性に対する懸念を生むことがあります。加盟国間で食品の規制基準が異なる場合、消費者は安全性の保証が十分でない輸入食品に直面するリスクがあります。特に、農薬や添加物の基準が緩い国からの輸入品には注意が必要です。また、安価な輸入食品が国内市場に流入することで、国内農業が圧迫されるだけでなく、食品の品質や生産者のモラルへの影響も考慮する必要があります。

雇用喪失の可能性

FTAの結果、競争力の低い産業が衰退すると、失業者が増える可能性があります。特に、製造業や農業のような労働集約型産業では、大量の失業が地域経済に深刻な影響を与えることがあります。失業した労働者が他産業に移行するためには、スキルの再訓練や雇用支援が必要ですが、それには時間と費用がかかります。短期的には、労働市場の混乱や所得格差の拡大が懸念されます。

規制緩和の圧力

FTAの交渉過程で、国内の規制や基準の緩和が求められることがあります。例えば、労働基準、環境規制、安全基準などが国際基準に合わせて緩和される場合、国内の基準が低下し、社会や環境に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、公共サービスや医療分野が自由化されると、国民へのサービスの質が低下したり、コストが上昇したりするリスクがあります。

主権の侵害

FTAの条項によっては、自国の政策決定権が制約されることがあります。例えば、外国企業が自国の政策に対して異議を申し立てる権利を持つ投資紛争解決条項(ISDS条項)などは、国内法や政策の独立性を損なうリスクがあります。結果として、政府が自国民の利益よりも外国企業の利益を優先せざるを得ない状況に陥る場合があります。このような事態は、国家主権の侵害として批判されることがあります。

中小企業への影響

FTAは主に大企業に有利な条件を提供することが多く、中小企業にとっては競争の激化という課題をもたらします。中小企業は、大企業と比べて資金力やリソースが限られているため、FTAによる市場開放に適応するのが難しい場合があります。また、FTAによって規制や手続きが複雑化する場合、中小企業が新しいルールに対応できず、競争力を失うリスクがあります。

文化的影響

FTAによる外国製品やサービスの流入は、国内の文化や伝統に影響を及ぼすことがあります。例えば、地元の伝統産業や手工芸が安価な輸入品に取って代わられることで衰退する可能性があります。また、国際的な大企業が国内市場を支配することで、地元文化の特徴が失われる懸念もあります。文化的多様性を守るためには、FTA交渉の際に文化保護の条項を設けることが求められます。

不均衡な利益配分

FTAによって恩恵を受ける国と不利益を被る国との間で、利益配分が不均衡になることがあります。特に、経済規模や競争力が異なる国がFTAを締結する場合、強い国が多くの利益を得る一方で、弱い国が損失を被ることがあります。また、FTA交渉の過程で、交渉力の弱い国が不利な条件を受け入れざるを得ない場合もあります。このような不均衡は、加盟国間の対立や不満を引き起こす原因となります。

みんなの意見

賛成意見 反対意見
FTAが締結されると実質無関税で自国の商品を輸出できるので、輸出企業は大変儲かります。例えば韓国とEUはFTAを締結しましたが、韓国のヒュンダイ自動車やサムスン・LGは、EU圏内でのシェアは一気に拡大しました。

またヨーロッパには付加価値の高い製品を製造しているメーカーが日本同様たくさんありますが、そういった商品が韓国で安く買えるというメリットもあります。

FTAの締結国から輸出されたものにこれが適用されるので、海外から工場を誘致することもできます。これによって雇用の拡大にもつながります。実際日本企業にも韓国に工場を建設しようという動きがあります。
FTAが締結されると、関税で守られていた自国の製品が、競争力を失うというデメリットがあります。特に農産物は打撃を受け安ため、様々な摩擦を生みます。このため政府は補助金を出すなどして、農家の補助をします。

またFTAを結んでいない国からの輸入品も競争力を失ってしまいます。この結果FTAを結んでいないライバル企業は大きな打撃になります。実際に日本はヒュンダイや、サムスン・LGにかなりシェアを奪われました。
2国間またはそれ以上の国で貿易の関税が撤廃されたり数量規制がなくなれば、基本的にこれまでよりも安い値段で貿易相手国の商品を購入することができるようになります。これは消費者にとっては大きなメリットです。

このため安く輸入される外国製品に対抗するため国内企業も生産効率を向上させるなど、自由競争が活性化します。

更に日中韓など過去の歴史問題が存在する国の間で経済活動が活性化すれば、政治問題の解決にもいい影響をあたえることが期待できます。
2国間またはそれ以上の国の間で関税がなくなり安い外国製品が無制限に輸入されるようになると、競争力のない国内の産業および企業は、いっぺんに衰退してしまう可能性があります。日本の農業などはその典型です。

一方で外国製品の流入によってこれまでの国内産業が淘汰された後で、外国製品の品質の問題が露呈した場合、既に衰退した国内産業を復興させることは困難です。

すなわち外国製品のシェアが100%近くになって、その製品が何かの理由で輸入できなくなった場合、国内で対応できなくなる可能性があります。
FTAを行えば、関税がなくなるためそれぞれの国の間でモノの行き来が活発になり、貿易が増大するであろうことが考えられます。

また、それぞれの国の企業にとっては、相手国の市場にも参加する障壁が低くなるため、より多くの顧客を相手に商売をすることが出来るようになります。

消費者にとっても自分の国で作るよりも相手国から買ったほうが安いものに関しては、輸入によって値段が下がるため価格低下の恩恵を受けることが出来るようになります。
関税がなくなるということは保護されている国内産業はそのまま競争にさらされるため、競争力のない産業は衰えてしまいます。

自国の産業構造が歪になってしまい、一部の商品に関して他国に頼らなければ調達できないということになってしまいます。

また、商売のルールもある程度すり合わせないとならなくなるため、自国の商習慣に根ざしたルールが相手国の意向に沿うような形に変えられてしまう可能性もあります。

労働コストが他国の方が安ければ、仕事を外国人に奪われ雇用が不安定化するリスクがあります。