メリット デメリット
税制優遇 設立の手間とコスト
資金調達のしやすさ 自由度の制限
事業継承の円滑化 利益配分の制限
社会的信用度の向上 監督の厳格化
従業員への福利厚生の充実 社会保険加入義務
リスクの分散 解散時の資産処分の制限
専門職の採用強化 経営が複雑化
資産の分離 収益性の追求が難しい
長期的な運営が可能 役員報酬の制限
医療の質の向上 ガバナンスの問題

医療法人のメリット

上の表に出てきた各メリットについてかんたんに解説します。

税制優遇

医療法人は法人税が適用されるため、個人経営と比較して税負担が軽減されることが多いです。個人事業では累進課税により所得税率が最大45%に達しますが、医療法人では法人税の実効税率が30%前後に抑えられる場合が一般的です。さらに、損失が発生した場合でも翌年度以降に繰り越して控除できる仕組みがあり、経営の安定化に寄与します。また、福利厚生費や退職金積立金などが損金として計上可能なため、節税効果を計画的に活用することができます。このような税制上のメリットは、一定以上の収益を上げている医療機関にとって大きな利点となります。

資金調達のしやすさ

医療法人は法人格を有することで、金融機関からの信用度が向上し、融資を受けやすくなります。特に医療機関は安定した収益が期待されるため、金融機関にとってリスクが低い事業と見なされることが多いです。融資を受ける際には法人としての決算書や事業計画書を提出することで、透明性を示し、さらに信頼を得やすくなります。この結果、医療機器の購入や施設の拡張、新規事業の展開といった場面で、必要な資金をスムーズに確保することができます。

事業継承の円滑化

医療法人では、法人そのものが事業主体であるため、代表者が交代しても法人の継続に影響を受けません。個人経営の場合、開業医が引退すると事業の継続が難しくなることがありますが、法人化していれば後継者が法人の代表に就任することで事業を継続することが可能です。また、法人格を持つことで、株式譲渡や持分譲渡を通じてスムーズに事業を引き継ぐことができます。これにより、税負担を抑えながら円滑な事業継承が実現します。

社会的信用度の向上

医療法人は法人格を持つことで、患者や地域社会、取引先からの信頼を得やすくなります。法人化することで経営の透明性が高まり、医療機関としての信頼性が向上します。また、法人化により行政機関や保険会社との連携もスムーズに進むことが期待されます。これにより、新規患者の獲得や診療範囲の拡大といった成長の機会が増え、地域社会における医療機関としての地位も強固なものとなります。

従業員への福利厚生の充実

医療法人は法人としての仕組みを整えることで、従業員の福利厚生を充実させやすくなります。社会保険の加入が義務付けられるため、従業員にとって働きやすい環境が提供されます。また、退職金制度や職員向けの福利厚生プログラムを導入する際にも、法人税の損金算入が可能であるため、経営者の負担を軽減しつつ従業員満足度を向上させることができます。これにより、優秀な人材の確保と職場への定着率向上が期待されます。

リスクの分散

医療法人化することで、経営者個人が負うリスクを分散することが可能です。個人経営の場合、事業上の損失や債務が経営者の個人資産に影響を与えることがありますが、法人化することで法人そのものが責任を負う形となります。この仕組みにより、経営者の個人資産を保護できるため、リスクに対する心理的な負担が軽減されます。これにより、経営者は長期的な視点で事業運営に集中することができます。

専門職の採用強化

医療法人として法人格を有することで、安定した経営基盤を求める医師や看護師、薬剤師などの専門職にとって魅力的な職場となります。また、法人化によりキャリアパスや福利厚生の充実を示すことができるため、人材獲得において競争力を高めることができます。さらに、安定した運営が確立している医療法人では、優秀な人材を長期的に確保し、育成する体制を構築しやすくなります。

資産の分離

医療法人化することで、経営者個人の資産と法人の資産を明確に区分することができます。この仕組みにより、個人資産が事業リスクに巻き込まれることを防ぎ、財務管理の透明性が向上します。また、法人としての資産管理が徹底されるため、経営上の資金計画や設備投資の判断を合理的に行うことが可能となります。資産の分離は、外部監査や金融機関とのやり取りにおいても有利に働きます。

長期的な運営が可能

医療法人は法人格を持つため、代表者が退任や逝去した場合でも法人そのものは存続します。これにより、地域住民や患者に対する医療提供を継続的に行うことが可能です。また、法人としての運営体制が確立していれば、後継者への引き継ぎもスムーズに進みます。この特性により、長期的な視点で設備投資や新たな医療サービスの計画を立てることが容易となり、安定した医療提供が実現します。

医療の質の向上

医療法人としての安定した収益基盤を活用することで、最新の医療設備や技術を導入しやすくなります。また、職員向けの研修や教育プログラムの実施を通じて、医療従事者のスキルアップを図ることができます。これにより、患者に提供する医療サービスの質が向上し、地域住民からの信頼を得ることが可能です。法人としての経営体制が整っていることで、より高度で継続的な医療の提供が実現します。

医療法人のデメリット

上の表に出てきた各デメリットについてかんたんに解説します。

設立の手間とコスト

医療法人を設立する際には、さまざまな手続きが必要で、それに伴うコストも発生します。設立には地方自治体や厚生労働省の認可を得る必要があり、提出書類として事業計画書、資金計画書、収支予算書などの詳細な資料が求められます。また、設立に際しては法人登記費用や司法書士、税理士などの専門家への依頼費用が発生します。さらに、法人設立後も毎年の報告義務や監査対応が必要となり、それらの運営コストが個人経営と比べて高額になります。このような初期投資や運営コストの増加は、医療法人設立の大きなハードルとなります。

自由度の制限

医療法人は公益性が強く求められるため、個人経営と比べて運営の自由度が低くなります。収益の使途には制限があり、基本的には医療サービスの提供や設備投資に限定されます。個人的な収益目的の投資や支出が難しくなるため、経営者としての自由な意思決定が制約を受けます。また、資産運用や施設の変更なども、法人規定や監督官庁の承認が必要となる場合があり、迅速な意思決定が難しくなるケースがあります。このため、柔軟性の低下は法人化のデメリットの一つと言えます。

利益配分の制限

医療法人では、法人の利益を経営者や理事に直接分配することが禁止されています。利益は法人内部に留保され、医療機関の運営や発展のために使用されなければなりません。これにより、経営者個人の収入が個人経営と比べて限定される場合があります。特に小規模な医療機関では、法人化による経済的な恩恵を十分に享受できないケースも考えられます。この利益配分の制限は、経営者の動機付けを低下させる要因となる可能性があります。

監督の厳格化

医療法人は行政機関や地方自治体による監督を受けるため、運営の透明性が求められます。法人としての活動は定期的な監査や報告義務が発生し、特に財務内容や事業計画に関する報告が義務付けられます。また、法人が法令に違反した場合、厳しいペナルティが科されることがあり、最悪の場合には認可取り消しや法人解散のリスクもあります。これにより、法人化による負担が増加し、経営者にはより慎重な管理体制の構築が求められます。

社会保険加入義務

医療法人では、従業員が一定数以上いる場合、社会保険の加入が義務付けられます。これにより、法人としての社会保険料負担が発生し、運営コストが増加します。特に中小規模の医療機関では、社会保険料負担が大きな経営課題となることがあります。また、社会保険制度の改正によって負担額が増えるリスクもあるため、長期的な財務計画が必要です。このコスト負担は、個人経営と比較して法人化のデメリットとして挙げられます。

解散時の資産処分の制限

医療法人を解散する際、法人が保有する残余財産は国や地方公共団体、または他の医療法人に譲渡しなければなりません。このため、法人化によって蓄積した資産を経営者個人が引き取ることはできません。個人経営であれば事業終了後の資産を自由に処分できますが、法人化した場合はこの自由が制限されます。解散後の計画を立てる際には、この資産処分の制限を考慮する必要があります。

経営が複雑化

医療法人は法人運営に伴い、経営管理が複雑になります。個人経営と異なり、法人税や社会保険料の申告、理事会の運営、監査対応など、専門的な知識が求められる業務が増加します。また、これらの業務を処理するために、税理士や社会保険労務士のサポートを必要とすることが多く、運営コストが高くなります。経営者が医療業務と法人運営の両立を図ることは困難であり、法人化による負担の増加がデメリットとなります。

収益性の追求が難しい

医療法人は公益性が重視されるため、利益追求には制約があります。収益があったとしても法人内部に留保し、医療施設の運営や発展のために使用しなければならず、個人的な収益を得ることが困難です。また、地域医療への貢献や公益性の維持が求められるため、利益率の高い事業に注力することが難しい場合があります。このように、収益性の追求が難しい点は法人化のデメリットの一つです。

役員報酬の制限

医療法人では、理事や監事の役員報酬が適正な範囲内に制限されています。過剰な報酬は税務署による指摘を受ける可能性があり、法人全体の信頼性を損なう恐れがあります。また、報酬額の設定は法人の財務状況や規模に応じたものとされるため、経営者の収入が個人経営よりも低く抑えられる場合があります。こうした制限があることで、経営者の収益確保における自由度が低下する可能性があります。

ガバナンスの問題

医療法人では、理事会や監査役会を設置し、法人運営の透明性やガバナンスを確保する必要があります。この仕組みにより、意思決定が迅速に行えない場合があります。特に大規模な法人では、複数の理事や監査役との合意が必要な場面が増え、意思決定のプロセスが複雑化します。これにより、迅速な対応が求められる場面での柔軟性が低下する可能性があります。このようなガバナンスの複雑化は、法人運営における課題の一つです。

みんなの意見

賛成意見 反対意見
医療法人は病院の建物などを法人の持ち物とすることができるので個人の資産と区別することで経営しやすくなる点が良いと思います。

また個人では「趣味」とみなされるゴルフなども法人では「交際」とみなされ経費に計上できるようになります。

理事長に退職金を支払うこともできますし、引退する際も次の世代に相続という形ではなく出資金(事業のためのお金)を移行させるという形が取れるので、相続税の節約になります。

個人であれば3年間しか認められない繰越損金が7年間に伸びるという利点もあります。
営利法人ではないのに公益法人でもないので税制面での恩恵が受けられず、法人税を支払わなくてはならない点が良くないと思います。しかも剰余金の配当ができません。

また法人では医師国保に加入できません。医師国保は収入によって負担額が変化することなく一人当たり幾らなので国民健康保険よりも割安になることが多いだけに、それが利用できないのは良くない点です。

個人とは違い最高決定は理事会ですので、法人の持ち物やお金を個人の財産のように扱うことは院長といえどもできないという点もあります。
病院を個人で経営していたとして、法人なりして医療法人化することのメリットの一つは、税金です。個人経営の場合は所得税、医療法人ですと法人税をおさめることになります。

所得税は累進課税方式となっていて、儲ければ儲けるほど段階的におさめる税金も高くなります(最高40%)。中小法人の法人税の税率は、所得金額800万円までは所得金額の15%、所得金額800万円超では25.5%となっています。

例えば、1800万円超の所得(税率40%)があったとすると、個人経営だと所得の金額×0.4から控除額2,796,000円を差し引いたのが所得税の額となります。

一方、中小法人の法人税ですと所得額が1800万円超ならば税率は25.5%となりますので、儲けが大きくなればなるほど医療法人の方が税金を納める額が低くなります。
会計処理については、法人なりして医療法人となると、個人経営のころと異なり、複雑になります。

逆に、きちんとした会計状況であることで信用度はますかと思いますが、どんぶり勘定をこのむようなタイプには決算の手続きが、煩雑だと感じるかもかもしれません。

ところで、医療法人は、経済活動で外部から得た利益を構成員へ分配しない非営利法人です。

剰余を分配しないということろがデメリットかと思われますが、更にデメリットともいえるのは、同じく非営利法人とされる他の公益法人、社会福祉法人、学校法人、宗教法人は非課税であるのに、医療法人は法人税を課税される点です。
個人事業者の場合は、売り上げの全てに税金が掛かってきます。法人化して給与として報酬を受けるようにすれば、給与所得控除が受けられて、結果として収入が増えます。

また個人で使用する物でも法人名義で購入すれば経費として認められ、個人としての支出を軽減させることが可能です。

経営者の収入の増加と安定、そして、法人内に資金が溜まるようになりますので、双方合わせて安定的な医療の提供という面で大きな意味があると思います。
簡単に医療法人が出来る訳ではありません。その手続きは非常に煩雑なものです。

届け出書類を個人で作製、提出するには十分な知識が必要になり、前持って業務の合間を縫って勉強しなければなりません。外部に依頼した場合にはその費用も必要になります。

また医療法人化後も書類手続きが発生します。つまり本来の医療業務に集中する時間が削られる結果になってしまう医療法人化は、安定的な医療の提供に影を落とす事になりかねないと思います。