メリット デメリット
相続税対策ができる 贈与税の発生リスク
非課税枠の活用 取り消しができない
相続時のトラブル回避 受贈者の資産管理能力への不安
被贈与者への早期支援 相続人間の不公平感
贈与者の意思反映 将来のライフプランの変更
資産管理の簡素化 法改正のリスク
財産分与の計画性 再計算制度による追徴課税リスク
信託や遺言との併用が可能 手続きや評価の複雑さ
相続税再計算の回避 資産の流動性低下の可能性
ライフプランに合わせた資産移転 家族間の誤解や心理的影響

生前贈与のメリット

上の表に出てきた各メリットについてかんたんに解説します。

相続税対策ができる

生前贈与は、相続が発生した際に課税される相続税の負担を軽減する有効な対策です。相続税は、遺産の評価額に基づいて累進課税方式で計算されるため、一度に大きな遺産を相続すると高率の税率が適用されるリスクがあります。そこで、生前に少しずつ財産を贈与しておくことで、相続財産の総額を抑えることが可能となり、結果として相続税の負担を低減させる効果が期待できます。また、非課税枠や特例制度をうまく活用すれば、計画的に贈与を行い、税負担の分散を図ることができます。さらに、相続時に急激な税負担が発生するのを避け、被相続人の意思に基づいた円滑な資産移転を実現できる点も大きなメリットです。こうした手法は、遺族が突然の大きな経済的負担に直面するのを防ぐための有効な手段といえるでしょう。

非課税枠の活用

生前贈与では、贈与税に関する非課税枠を活用することが可能です。毎年一定額までの贈与については、税務上の負担が発生しないため、計画的に財産を移転する際に大きなメリットとなります。例えば、暦年課税制度に基づいて、年間で一定額内であれば贈与税がかからないため、毎年少額ずつ贈与を行うことで、贈与税の負担を受けずに資産移転が可能となります。この非課税枠を活用する方法は、贈与を受ける側にも計画的な資産形成の機会を提供し、急激な相続税負担を回避する一助となります。また、非課税枠の範囲内であれば、贈与契約の手続きや評価の面でも比較的簡易な対応が可能なため、手間やコストを抑えながら資産の円滑な移転が実現できます。こうした点から、非課税枠を意識した計画的な生前贈与は、財産管理において重要な戦略のひとつと言えます。

相続時のトラブル回避

生前贈与は、相続発生時に起こりがちな家族間のトラブルや紛争を未然に防ぐ手段としても有効です。遺産分割を巡る争いは、遺言の有無や各相続人の受け取る財産の割合を巡って生じやすく、結果として家族関係に深刻な亀裂をもたらすことがあります。生前に贈与を行い、各相続人にあらかじめ財産を分け与えることで、遺産分割の際の不公平感や疑念を軽減し、円満な家族関係を維持する効果が期待されます。また、贈与者自身の意思が明確に反映されるため、後の紛争回避に寄与するだけでなく、受贈者側も自らの資産状況を早期に把握し、計画的な生活設計を立てることができる点も大きな魅力です。こうした事前の財産移転は、予期せぬ相続争いを防ぐための重要な予防策として、多くの家庭で検討されています。

被贈与者への早期支援

生前贈与の大きなメリットのひとつは、被贈与者が早い段階で資産を受け取り、必要に応じて活用できる点です。たとえば、子どもの教育資金や事業資金、生活資金として、または老後資金として計画的に利用することが可能となります。贈与を受けた資産は、すぐに現金化や運用ができるため、経済的な安心感を早期に得ることができます。また、被贈与者は自分の意思で資産を管理・運用する機会が生じ、独立した生活設計を立てる上での大きな支援となります。贈与者と被贈与者の間であらかじめ資産の使い道や管理方法について合意しておくことで、トラブルの発生を未然に防ぎ、双方にとって最適な資産活用が実現できる点も大きなメリットです。こうして、生前贈与は被贈与者の経済的自立を促進し、長期的な生活設計に寄与します。

贈与者の意思反映

生前贈与を行うことで、贈与者自身の意思や家族への想いを具体的な形で反映することが可能となります。贈与者は、遺言や最終的な遺産分割に頼ることなく、生前のうちに自らの意向に基づいて財産を配分できるため、後々のトラブルを未然に防ぐとともに、自身の意志を明確に伝えることができます。これは、特に複雑な家族構成や特定の目的に沿った資産移転を望む場合に有効です。たとえば、特定の子どもや親族に対して事業資金や教育資金として資産を先に提供する場合、贈与のタイミングや方法を細かく設定できるため、後からの誤解や紛争を回避する手段となります。さらに、事前に計画的な贈与契約を交わすことで、法律的な手続きや証明も整えやすくなり、贈与者の真意が明確に伝わるようになります。こうしたプロセスは、信頼関係の維持と将来の安心に直結する重要な要素です。

資産管理の簡素化

生前贈与を実施することで、贈与者自身の資産管理が大幅に簡素化されるメリットも存在します。長年にわたり蓄積された財産を一度に整理するのは、管理面での手間やリスクが伴うことが多いですが、計画的に一部の資産を移転することで、残された資産の規模や種類を限定し、管理負担を軽減できます。これにより、贈与者は日常的な資産運用や管理の手間を省き、リスク分散や効率的な資産運用に専念することが可能となります。また、余剰資産が減少することで、将来のライフプランに合わせた資産運用戦略の見直しや、リスク管理の観点からも有利な状況を作り出すことができます。結果として、複雑な財産の整理が必要な場合でも、よりシンプルかつ効率的な管理が実現でき、安心して老後を迎えるための基盤作りに寄与します。

財産分与の計画性

生前贈与は、遺産分割において計画的かつ公平な資産配分を実現するための有力な手段です。遺産相続では、遺言の内容や法定相続分に基づいて資産が分割されますが、必ずしも各相続人のニーズや状況に最適な形で分配されるとは限りません。生前に贈与を行い、各相続人の現状や将来の生活設計に合わせた財産移転計画を策定することで、各々の必要性に応じた資産配分が可能となります。これにより、将来的な不公平感や争いのリスクを低減し、事前に合意された分与方法が明文化されるため、家族間の信頼関係を維持しやすくなります。また、各相続人が早期に受け取った資産を自己責任で管理・運用できる環境が整うため、長期的な視点での経済的自立や安心感の確保にも寄与します。こうした計画的な財産分与は、家族全体の未来設計において非常に有用なアプローチです。

信託や遺言との併用が可能

生前贈与は、信託や遺言など他の相続対策手段と組み合わせて利用することで、より柔軟で多様な資産承継プランを構築できる点が大きなメリットです。信託を活用すれば、贈与後の資産運用や管理を専門家に委託することが可能となり、受贈者が資産を適切に活用できるようサポートする仕組みが整えられます。また、遺言との併用により、贈与者の最終的な意思を明確に伝えることができ、万一の際にも家族間での混乱を防ぐ効果が期待されます。こうした組み合わせは、各家庭の事情や将来設計に応じたカスタマイズが可能であり、単独での生前贈与では対応しきれないリスクや課題にも柔軟に対処できるメリットがあります。結果として、全体としての相続計画がより堅実かつ安心できるものとなり、長期的な財産承継において非常に効果的な戦略といえるでしょう。

相続税再計算の回避

生前贈与を適切に行えば、相続時に再計算される贈与分の評価額によって、相続税が急増するリスクをある程度回避することが可能です。通常、生前贈与が行われた場合、その贈与額は一定期間内において相続財産に加算される制度があり、適切な計画がなされなければ、予期せぬ追徴課税の対象となる場合があります。しかし、事前に専門家と十分に相談しながら贈与の時期や金額、評価方法を検討することで、この再計算のリスクを低減できます。結果として、相続税の算定において不利な条件が適用されることを避け、計画的に税負担を分散させる効果が期待されます。さらに、適切な記録や契約書の整備を行うことで、後日税務署とのトラブルを防ぎ、円滑な相続手続きが進むため、家族全体の経済的負担軽減にも寄与します。

ライフプランに合わせた資産移転

生前贈与は、個々のライフプランに合わせた柔軟な資産移転が可能な点でも大きなメリットがあります。たとえば、贈与者自身の老後の生活設計や、被贈与者の教育・事業資金の必要性に応じて、贈与のタイミングや方法を調整できるため、将来的な資金需要に合わせた最適なプランニングが実現します。事前に計画を立てることで、急激な経済状況の変動や家族の事情の変化にも対応しやすく、余裕を持った資産運用が可能となります。また、ライフステージごとに必要な資金の使途が明確になれば、贈与後の管理や運用に関するリスクも低減され、長期的な安心感を得ることができます。こうした柔軟性は、固定された遺産分割だけでは実現しにくい点であり、家族全体の将来設計に合わせた、より個別化された資産承継計画として大いに有用です。

生前贈与のデメリット

上の表に出てきた各デメリットについてかんたんに解説します。

贈与税の発生リスク

生前贈与では、贈与税の非課税枠を超える贈与が行われた場合、贈与税が課税されるリスクがあります。例えば、年間で贈与できる非課税枠を超えた金額については、累進課税方式が適用され、贈与額が大きくなるほど高い税率がかかります。このため、計画性のない大口の贈与や一度に多額の資産移転を行うと、意図せず多額の贈与税負担が発生し、結果として受贈者や贈与者にとって経済的な負担が重くなる恐れがあります。また、税制の解釈や運用は年度ごとに変更される可能性もあり、最新の制度を常に把握していなければ、計画段階での誤算が生じるリスクも伴います。専門家と十分に相談し、非課税枠内での分割贈与や適用可能な特例措置を活用するなど、慎重な対応が求められます。

取り消しができない

生前贈与は一度実行されると、原則として取り消しが認められないため、後から贈与内容に対して変更や撤回が困難です。万が一、贈与後に贈与者の生活状況が変化したり、経済的な必要性が急増した場合でも、既に移転した財産を戻すことは原則としてできません。さらに、受贈者が贈与後に資産管理を誤る、または資産を不適切に使用してしまった場合、その修正や補填も困難です。贈与契約やその手続きにおいても、後々の変更ができないため、初期の計画段階で十分な検討と家族間の合意形成が求められます。特に、家族構成や将来のライフプランが変動しやすい場合には、事前にリスクとメリットを慎重に比較し、固定的な判断を下さないよう注意が必要です。取り消しができない性質を理解した上で、慎重な計画立案が不可欠です。

受贈者の資産管理能力への不安

生前贈与で移転された財産は、受贈者自身が管理することになります。しかし、受贈者の資産管理能力が十分でない場合、受け取った資産を適切に運用できず、無駄遣いや不適切な投資判断により、資産価値が下落してしまうリスクがあります。特に、若年層や経験の浅い受贈者の場合、経済的な知識や資産運用のスキルが不足している可能性があるため、贈与が必ずしもプラスに働くとは限りません。また、管理が不十分だと、将来的に自立支援という目的が達成されず、逆に生活の安定を損ねる恐れもあります。こうした状況を避けるために、贈与者は受贈者の経済状況や管理能力を十分に評価し、必要に応じてファイナンシャルプランナーや信託を活用するなど、サポート体制を整えることが求められます。管理体制の不備は、長期的な資産形成に悪影響を与えるため、事前の計画と教育が重要となります。

相続人間の不公平感

生前贈与は、特定の相続人に対して優先的に資産を渡すケースが多く、その結果、他の相続人との間で不公平感が生じる可能性があります。例えば、一方の子供に多くの財産を贈与した場合、他の子供は相対的に受け取る財産が少なくなり、遺産分割時の不満や家族内の対立を引き起こすリスクがあるのです。また、贈与の理由や背景が十分に説明されなかった場合、受け取らなかった側からは「差別的な扱い」や「不平等」と捉えられ、家族間の信頼関係に悪影響を及ぼすことも懸念されます。贈与者としては、各相続人の事情やニーズを踏まえ、可能な限り公平な資産分配を目指すとともに、事前に家族全体で話し合い、合意形成を図ることが大切です。不公平感による家族内の軋轢は、遺産分割後の関係にも影響するため、透明性のある計画とコミュニケーションが求められます。

将来のライフプランの変更

生前贈与を行うと、その時点でのライフプランに基づいた財産移転が確定するため、将来的な状況の変化に柔軟に対応しにくくなります。贈与後に贈与者自身や受贈者の生活状況、経済状況、健康状態、家族構成などが変わった場合、当初の計画が最適でなくなる恐れがあります。例えば、贈与後に急な医療費や生活資金が必要になった場合、既に譲渡された資産は取り戻すことができないため、急な資金需要に対応できなくなります。また、受贈者側も計画が固定されることで、将来の投資や貯蓄の柔軟性が失われ、結果として経済的な自由度が制限される可能性があります。こうしたリスクを回避するためには、将来の変化を見越した柔軟な贈与計画や、万一の場合に備えたバックアッププラン、さらには信託などを活用して資産管理の調整が行える仕組みを検討することが重要です。

法改正のリスク

相続や贈与に関する法律や税制は、時代や社会情勢の変化に合わせて改正されることがあり、これに伴って生前贈与のメリットや手続きが影響を受ける可能性があります。例えば、現在有利とされる非課税枠や特例措置が将来的に縮小・廃止されると、従来の計画が一転して不利な条件で運用されるリスクがあります。また、法改正により手続きや報告義務が厳格化される場合、贈与契約に伴う手間やコストが増大し、計画の柔軟性が低下する可能性も考えられます。さらに、法改正は突然行われることもあり、事前の情報収集や専門家との連携が十分でないと、変更に迅速に対応できない恐れがあります。法改正のリスクを最小限に抑えるためには、最新の法制度に常に注意を払い、信頼できる税理士や弁護士と定期的に相談しながら、贈与計画を柔軟に見直す仕組みを整えておくことが重要です。

再計算制度による追徴課税リスク

生前贈与では、一定期間内に行われた贈与が相続発生時に再計算の対象となり、相続税の基礎となる財産評価に組み込まれるケースがあります。再計算制度の下では、贈与時の評価額が相続時の評価額と大きく乖離していた場合、追徴課税が発生するリスクがあるため、結果として予期せぬ税負担が重くなる可能性があります。特に、市場環境の変動や資産の種類によっては、贈与時と相続時で評価額に大幅な差が生じることがあり、計画的な資産移転が逆効果となる場合も考えられます。このリスクを回避するためには、贈与のタイミングや評価方法、さらには税制上の特例措置について、専門家と十分に検討しながら進める必要があります。適切な記録の保持や評価基準の明確化が、後日税務調査での指摘を避けるためにも重要となり、全体の資産移転計画のリスク管理が求められます。

手続きや評価の複雑さ

生前贈与を実施する際は、財産の種類や評価方法、手続きの複雑さが問題となることが多いです。不動産や事業用資産などは、贈与時の評価が難解であり、適正な市場価値の算定が求められます。これに伴い、専門の評価士や税理士、弁護士などの専門家の助言や関与が不可欠となり、手続きにかかる時間や費用が増大するリスクがあります。また、贈与契約書や必要書類の作成、税務署への申告といった行政手続きが複雑であるため、手続きミスや書類不備による後日のトラブル発生の可能性も否めません。特に、各種税制や法令の変更が頻繁に行われる環境下では、最新の情報に基づく手続きが要求されるため、準備不足が追徴課税や罰則のリスクを高めることにもつながります。こうした複雑さは、事前の十分な準備と専門家との連携を通じて、慎重に管理する必要があります。

資産の流動性低下の可能性

生前贈与により、特定の資産、特に不動産や事業資産などの形態の財産を移転すると、その後の流動性が低下する可能性があります。流動性が低い資産は、売却や現金化に時間がかかるため、急な資金需要や経済状況の変動に柔軟に対応することが難しくなります。また、所有権の移転後、受贈者が資産の適正な管理や売却を行えなかった場合、結果として資金繰りの悪化や経済的な不安要素が増えるリスクがあります。さらに、資産評価額の変動により、実際の市場価値と帳簿上の評価とのギャップが生じると、後日資産の処分時に不利益を被る恐れもあります。こうした点から、流動性の低い資産の生前贈与は、全体の資産管理計画やライフプランに与える影響を十分に検討した上で実施する必要があります。計画的な分割売却や信託など、柔軟な対応策を併用することが望まれます。

家族間の誤解や心理的影響

生前贈与は、家族内の感情や心理的な側面にも大きく影響を与える可能性があります。特に、贈与のタイミングや対象、金額の違いにより、受贈者間で「不公平」や「偏り」があると感じられると、家族間の信頼関係や絆が損なわれるリスクがあります。贈与が単なる経済的援助としてだけでなく、感情的な意味合いを含む場合、受け取らなかった側や他の相続人に不満や嫉妬、誤解を生じさせる可能性があるのです。また、贈与者自身がその行為によって「先取り相続」を印象づけ、受贈者に対して心理的なプレッシャーを与えるケースも考えられます。こうした心理的影響は、後々の家族関係に深刻な亀裂をもたらす恐れがあり、贈与計画を立てる際には、金銭面のみならず、家族間のコミュニケーションや意向調整、さらには専門家のカウンセリングなどを通じた感情面のフォローも重要となります。十分な説明と全員の納得を得る努力が、誤解や不和を防ぐ鍵となります。

みんなの意見

賛成意見 反対意見
生前贈与が、一定の条件下で子供の住宅資金と孫の教育資金等に行う場合に、贈与税が掛からないと言う制度が導入されました。これは、相続税の一人当たりの額の引き下げ等の強化に合わせて実施されたもので、高齢者が資産を溜め込んでいるのを早期に市場に出すようにする施策として導入されたものです。贈与を受ける側にとっては、お金が本当に必要な時期に、親からの資金援助を受けられるメリットがある点では、良い制度と言えるでしょう。 制度導入の主旨は理解できますが、生前贈与を緩める事で、相続税は大きく減少する形となるはずで、トータルの税収の減少と、持てる人から多くの税金を徴収するという点ではマイナス面も大きい制度と言えます。贈与税は、相続税よりも税率が高く、しかも従来は生前贈与の無税額が少なすぎた事は事実です。しかし、子供の住宅資金や孫の教育資金に限っているとはいえ、一気に無税枠を大きくするのは、少し行き過ぎの様な気がします。無税とせずに、税率を普通の贈与税よりも下げる施策で十分だったのではないかと思います。
医学が発達して高齢化が一般的となっている現在、70歳80歳でも現役の方が増えてきています。もちろん元気でお仕事をされているのは喜ばしいことですが、跡継ぎが何歳になってもトップになれないという場合もあるでしょう。そんな時に生前贈与で次世代に渡せるものを少しずつ贈与できれば、跡継ぎの本人だけでなく、周りも安心すると言えます。引き継ぎをしながら、世間にも誰が跡とりなのかを示せますから「生前贈与」は、税金対策だけでなく必要なものなのです。 いったん生前贈与をしてしまうと、元に戻せないといって良いのではないでしょうか。家族で住んでいる家を息子に名義変更してから、親よりも息子が先に亡くなってしまったなんて話も聞きます。その場合は、息子の嫁や子ども達が遺産相続人となり、親に遺産相続の権利は無くなります。息子の親がまだ生きているなら、嫁が同居しながら義父母の面倒を見なければいけないのか、それとも家を売って義父母と別の生活をするのか・・・難しいですよね。そんな問題を避けるためにも、家や土地など今自分達が生活するために必要なものは、生前贈与するにしても全部ではなくて、一部だけでも親世代が自分達の権利を残しておいた方が良いと思います。
親が生きている間に財産を受け取れると言う事は、親と直接、話し合いが出来たり、親に確認しながら手続きが出来るので、親が死んでしまった後に親族同士が財産分与で揉める事も少なくなると思います。また、生前に財産を処分出来る事によって、高齢のお年寄りの財産管理の負担も減るので良いと思います。それから、生前に財産を分与出来ることによって、親子の関係が良くなり、それが親孝行に繋がる事にもなるのではないか?と思います。 生前に財産を受け取る事が出来たら、その財産を受け取ったら、親の面倒をみなくなる人も居るかもしれません。もし、そうなったら、最後に悲しい思いをしながら亡くなっていくお年寄りも増えるかもしれません。また、亡くなる前に相続の話をすることによって、渡す方としては、嫌なもめごとに巻き込まれる可能性もあると思います。遺言として残し、亡くなった後に相続された場合には、文句のつけようがありませんが、生前の場合は、親族から文句を言われたり、交渉されたりすることになる可能性もあると思います。
相続は、被相続人の死亡という偶然の出来事に付随して行われるものなので、あらかじめ準備しておくことが難しいものです。また、遺言書などをしっかり作っていないと、被相続人の意思を正確に反映させることが難しくなります。この点、生前贈与は被相続人がまだ生存中に行うものなので、十分な準備をして行うことができます。また、被相続人がまだ生きているので、その意思を十分い反映させることができます。これらの点で生前贈与は優れています。 生前贈与は、贈与契約が履行されて時点で終了します。つまり、財産の移動が確定します。これらは被相続人の死亡に備えて行われるものですが、実際に被相続人の死亡する時期については不確定です。贈与契約が終了しても、被相続人の生活は続きます。その間、病気や体調の変化など、不測の事態が生じることも考えられます。それに従って、必要なお金も変わってきますが、だからといって生前贈与をやりなおすということは出来ない点はよくないと考えられます。
生前贈与の良いところは、なくなってからお金や財産のことにおいて揉めることがなくなると言うことです。生きている間にお金の行き先を決めてしまうのは良いことです。またこれによって、遺産にかかる税金を少なくすることができるので、財産を受け取る人、渡す人の双方にメリットがあります。亡くなった人の考えを尊重することができますし、話し合いをすることによって、お金をどのように扱うのか決めて安心してあの世に行くことができます。 贈与の悪いところは、死ぬまでのライフプランが立てにくいと言うことです。亡くなる直前まで、病院などに入院をすれば、お金が必要になります。生前贈与に伴って、その人の持っている資産を全て譲り渡してしまうと、その後急にお金が必要になったときに対応することができなくなります。贈与に関しては税金がかかってくるため、贈与をしてしまっても、渡した人の考えで戻すことができるようにしなければ、ライフプランと同時にマネープランを設計することができなくなってしまいます。