新卒採用のメリット
上の表に出てきた各メリットについてかんたんに解説します。
組織の若返り・活性化が図れる
新卒社員は平均年齢が20代前半であることが多く、年齢構成が高齢化しがちな企業にとっては貴重な若手戦力です。若年層の採用により、組織にフレッシュな雰囲気が生まれ、社内に活気が戻ることがあります。また、ITや最新の価値観に精通した世代でもあり、デジタル化や柔軟な働き方などの新しい考え方が組織に浸透するきっかけにもなります。さらに、ベテラン社員と若手との世代間コミュニケーションが活発になることで、社内の風通しがよくなり、イノベーションの土壌づくりにもつながります。
自社文化や価値観を浸透させやすい
新卒社員は他社の企業文化に染まっていないため、自社の理念や行動指針をゼロから教えることができます。社会人としての常識から業務のやり方、チームでの立ち振る舞いなどを会社の方針に基づいて指導できるため、社風との親和性が高まりやすいのが特徴です。また、新卒社員は「新しい環境に順応したい」「会社の一員として認められたい」という思いが強いため、価値観やルールの受容度も高いです。これにより、自社のカルチャーを色濃く継承する将来の中核人材へと育成することが可能になります。
長期的な人材育成ができる
新卒採用は、社員を数年単位で計画的に育てることが前提となるため、将来の管理職や専門職としての育成に適しています。新人研修やOJT、職場内教育を通じて段階的に成長を促し、業務に対する理解を深めながら、会社全体の仕組みや人間関係も把握していきます。このように長期間かけて育てることにより、業務知識だけでなく、社内ネットワークや組織文化への理解も深まり、企業の中心を担う人材に育ちやすくなります。また、長期的視点でのキャリア開発やローテーションによる多角的なスキル習得も可能です。
企業イメージの向上に貢献
大学生や就活生の間では「新卒採用を継続している=安定している企業」というイメージが強く、採用活動を通じて企業の知名度や好感度を高める効果があります。大学での説明会や合同企業イベントなどに参加することで、多くの学生と接点が持て、ブランディングにもつながります。また、採用活動に積極的な姿勢は、「人を大切にしている企業」という評価につながり、学生だけでなく保護者や教育機関からの信頼も獲得できます。これは中長期的に優秀な人材が集まりやすくなる土台を築くことにもなります。
コストが比較的抑えられる
新卒採用は初任給が一律であり、中途採用のような職務経験に応じた高額年俸が必要ないため、初期の人件費を抑えられるというメリットがあります。また、求人広告や紹介料などの採用コストも比較的安価に済むことが多く、採用人数が多い場合はスケールメリットも働きます。ただし、教育や研修にかかるコストは発生しますが、それも長期的な視点で見ると投資の一環と捉えることができます。総じて、新卒採用は中途採用よりもトータルでのコストパフォーマンスが高いとされることが多いです。
社内にロイヤルティを持ちやすい
新卒社員は、社会人としての第一歩をその企業で踏み出すため、会社への思い入れや忠誠心を持ちやすい傾向があります。特に、研修や配属時の丁寧なサポート、上司・先輩との関係構築がうまくいけば、会社に対する信頼感や帰属意識が育ちやすくなります。こうしたロイヤルティは長期的な定着率に大きく寄与し、将来的には幹部候補やリーダーとして活躍する土台にもなります。中途採用者よりも「自分を育ててくれた会社」への恩義を強く感じるケースが多く、離職率の低減にもつながることが期待されます。
社内の教育制度の活用促進
新卒社員の入社は、企業にとって教育体制の整備や見直しの機会でもあります。毎年新たに人材を受け入れることで、研修プログラムやマニュアルの更新、OJTの仕組み強化などが促進され、教育制度全体が活性化します。また、先輩社員が指導役となることで、教える側の成長やリーダーシップの醸成にもつながり、組織全体の人材育成力が底上げされます。このように新卒採用は単なる人材補充ではなく、社内教育力の向上や人材循環を生み出す重要な仕組みの一部といえます。
柔軟性と吸収力が高い
新卒社員はまだ業務経験がない分、柔軟な思考を持ち、新しい知識やスキルを吸収しやすい傾向があります。固定概念や過去のやり方に縛られず、素直に指導を受け入れることができるため、会社の方針や業務プロセスに順応しやすいのが特徴です。また、最新のITリテラシーを持つ若者も多く、新しいツールやデジタル技術への抵抗が少ない点も企業にとっては大きなメリットです。変化の激しい現代のビジネス環境において、柔軟性の高い若手人材は組織の進化を支える原動力となり得ます。
チームワークを重視しやすい
新卒社員は、大学生活でのゼミやサークル、アルバイトなどで集団行動に慣れており、チームでの協力意識やコミュニケーション力を比較的持ち合わせています。また、同期入社という共通の仲間意識がモチベーションを高め、チームワークを大切にする文化が自然と形成されやすくなります。組織としても、同世代の集団を一度に受け入れることで、チーム単位での業務習得や成長促進がしやすくなります。将来的にも協調性を重視した人材として活躍できる可能性が高く、職場の人間関係にも好影響をもたらします。
新しい視点やアイデアの提供
新卒社員はまだ社会に染まりきっていない分、物事を斬新な視点から見ることができ、社内の当たり前に疑問を投げかけることがあります。このような“異質な視点”は、現場にとって気づきを与えるきっかけになり、業務改善や新たな発想につながることがあります。また、Z世代に特有の価値観やSNSを通じた情報感度の高さなども、マーケティングや商品企画において貴重なアイデア源となる可能性があります。若者ならではの自由な発想は、既存社員に刺激を与え、組織にイノベーションをもたらす可能性を秘めています。
新卒採用のデメリット
上の表に出てきた各デメリットについてかんたんに解説します。
即戦力として機能しにくい
新卒社員は職務経験がなく、社会人としての基本的なマナーやビジネススキルもこれから学ぶ段階にあります。そのため、入社直後から即戦力として働いてもらうことは難しく、実務に慣れるまでに一定の期間を要します。例えば、電話応対や書類作成、業務の優先順位付けなど、基礎的な作業一つひとつに時間がかかることもあります。企業側はその間、教育にリソースを割かなければならず、短期的な業績への貢献は見込みにくいです。特に人手が不足している部署にとっては、新卒の育成が大きな負担となることもあります。
育成コストが高い
新卒社員は知識も経験もない状態からスタートするため、基礎からの教育が必要です。集合研修やOJTにかかる人件費、マニュアル作成、育成担当者の業務負担などを考慮すると、1人あたりの育成コストはかなり高くつくことがあります。特に、教育制度が整備されていない企業では、教育が属人化しやすく、成果がばらつく原因にもなります。また、せっかくコストをかけて育てても、短期間で離職してしまうリスクもあるため、投資対効果が見えにくいという課題もあります。教育体制と人材定着施策の両方をバランスよく構築する必要があります。
早期離職のリスクがある
新卒社員は就職活動の際に企業を理想化して入社を決めることが多く、実際の業務や社内の雰囲気とのギャップに直面した際、早期離職につながることがあります。特に、仕事のやりがいや人間関係に不安を抱えたまま放置されると、わずか数か月で退職するケースもあります。企業にとっては、採用や育成にかけたコストが無駄になり、再採用や再教育の必要性が生じることになります。また、社内に「辞めやすい雰囲気」が広がることで、他の若手社員にも悪影響を及ぼすおそれがあります。定着率を上げるためには、フォローアップ体制の強化が重要です。
採用活動の負担が大きい
新卒採用はスケジュール管理や準備に多くの工数がかかり、企業の人事部門にとって大きな負担になります。説明会、インターンシップ、面接、内定者フォローなど、選考段階が多岐にわたるため、採用担当者や現場社員も多くの時間を割かなくてはなりません。加えて、大学との連携や応募者管理、オンライン対応なども含め、採用戦略を綿密に設計する必要があります。特に中小企業の場合、人手やノウハウが不足しており、採用競争において不利な状況に陥ることも少なくありません。新卒採用は「準備と継続」が不可欠な長期戦です。
景気変動の影響を受けやすい
新卒採用は、1年以上先の人員計画を立てて実施するため、景気や業績の変動に対して柔軟に対応しにくいという特性があります。たとえば、採用を実施した翌年に業績が悪化した場合でも、すでに内定を出しているため採用を中止できないことがあります。また、逆に好景気時に人材が足りなくなっても即戦力の新卒はすぐには育たないため、対応が遅れるというリスクもあります。このように、新卒採用は景気の波に左右されやすく、組織の人員構成に空白期間が生じるなど、中長期的なバランスを崩す可能性があります。
学生側の情報だけでは適性が見えにくい
新卒採用では、応募者の実務経験がないため、履歴書や面接だけではその人の仕事適性や実力を正確に判断することが困難です。特に書類上は優秀に見えても、実際の職場では思ったように力を発揮できないケースもあり、「見極め」の難しさがつきまといます。また、短時間の面接では、地道な努力ができるタイプか、プレッシャーに強いかなどの内面的な資質を測るのは限界があります。インターンや適性検査などの補完的な手法を取り入れる必要がありますが、それでもミスマッチを完全に防ぐことは難しいのが実情です。
教育担当者の負担増
新卒社員の育成には、現場で働く中堅社員や管理職のサポートが不可欠です。OJTや業務指導、メンタルケアまでを担当することが多く、現場の業務が忙しい中で育成と本来業務を両立させなければならないため、教育担当者の負担が大きくなります。また、教えるスキルやコミュニケーション能力が教育担当者側に不足していると、育成の質にばらつきが出たり、教えられる新卒側のモチベーションが低下したりするリスクもあります。教育担当者自身の育成もセットで行う必要があり、企業全体の組織力が問われる部分です。
業務効率が一時的に低下する
新卒社員が戦力として活躍できるようになるまでには時間がかかるため、その間、業務効率が一時的に落ちることがあります。先輩社員は通常の業務に加え、教育やサポートを行う必要があり、自身の生産性が下がるケースも少なくありません。また、新卒社員自身も業務に不慣れなため、ミスや確認作業の増加などが発生し、チーム全体のスピードや質に影響を与えることもあります。このような期間を乗り越えるには、現場全体で育てるという意識の醸成と、計画的なOJT体制の整備が欠かせません。
内定辞退のリスク
新卒採用では、複数の企業から内定を得た学生が、最終的に他社を選ぶ「内定辞退」のリスクが常に存在します。特に売り手市場の時期には学生がより良い条件を求めて、入社直前になって辞退することもあり、企業側にとっては人員計画が大きく崩れる要因になります。内定辞退者が出ると、再選考や人材の再配置、業務分担の見直しが必要となり、現場に負担がかかることもあります。辞退防止のためには、内定後のフォローアップや魅力づけ、学生との継続的なコミュニケーションが非常に重要になります。
モチベーションの個人差が大きい
新卒社員は全員が同じスタートラインに立つように見えますが、実際には入社時点でのモチベーションや社会人意識には大きな差があります。「働く理由」が明確でないまま就職した学生や、生活習慣が乱れている学生なども一定数存在し、そういった社員の指導にはより多くの時間と労力が必要です。また、自主的に学ぶ姿勢が乏しいと、教育の効果も限定的になります。こうした個人差を見極め、個別に対応していくには、柔軟な人材マネジメントと教育体制が求められます。
みんなの意見
賛成意見 | 反対意見 |
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同じ世代の人材が一度に入ってくることによって、雇用者側は管理がしやすく、新人研修なども施しやすいと思います。また学生にとって就職活動を行う時間は、自分自身を見つめなおす良い機会にもなります。 労働者側にとっても、同じ世代の仲間がいることは大変心強いことであり、労働者同士の横のつながりは長期に渡って大切なものとなり得ます。 できるだけ早く実務経験を積ませることによって、環境や仕事内容にも早く慣れることができるので良いと思います。 |
現状、多くの企業が大変忙しく、新人教育に時間を取れていない企業がたくさんあります。その為、新人と言えども即戦力を期待されることが多く、丁寧な研修を施してもらえないというデメリットがあります。 そうなると、その会社の実務において有効な能力のみが経験値として貯まっていくので、転職をした際や他の業種を経験する際などに、その場に合わせて柔軟に適合していくことが難しくなりやすいと思います。 色々な人材を増やすためにも、企業は新人採用にばかり間口を広げるだけでなく、柔軟な採用の仕方が求められると思います。 |
新卒者を採用するメリットは、会社が活気付くということです。一生懸命会社に慣れ、仕事を覚えようとする懸命な姿は、私たちが忘れていた初心を思い出させてくれます。 また、元気な挨拶、謙虚な姿勢など、社内の雰囲気がよくなる場合があります。仕事に慣れた人が、余計な雑務を新入社員に任せることができますから、仕事の効率もあがります。 意見が採用されるかどうかに関わらず、新卒者はやはり若い感覚があります。私たちが考えもしないようなアイディアを持っているという意味でも会社は活性化されます。 |
新卒者を採用するデメリットは、ゆとり世代の恐怖です。最近の若い人はゆとり教育でのびのびと育てられすぎたせいか、私たちには考えられない常識と感性で生きています。 会社という組織の中でのルール、会社の中での常識、上下関係、厳しい指摘、それらを受け止められない新卒者がいます。 すっかり大人気取りで、態度が大きいし、何かを指摘するとすぐに嫌な顔をしたり。言葉遣いも一から教えなければいけません。 そして、色々教え、研修までしておきながら、すぐに仕事をやめてしまったりするというリスクがあります。 |
新卒採用のメリットはなんといっても長い勤続年数をもつ優秀な人材を確保しやすいということでしょう。22歳から定年までの60歳、65歳までの約40年間で様々な経験を積んで育った人材はまさに会社の宝であるといえます。 中途採用によっても適材適所の人材を探すことはできますが、やはり、会社のことを一番良く分かっている、いわゆる生え抜きの人材が確保できるというのというのは新卒採用した社員だからこそなせることだと思います。 |
新卒採用には数によるデメリットというものがあります。新卒採用で一定数の新入社員を確保することで、その中から優秀な人材や会社に多大な利益をもたらす人材が確保できます。 その一方で、採用してはみたが社の方向性とあわない社員というのも少なからず出てきます。社会人経験のない若人は採用する側もされる側も未知の部分が多く判断材料が出揃っているとはいえません。 会社にあった人材が見つかる裏には会社にあわない人材も出てきてしまうとうことも忘れてはなりません。 |
就職を望む学生にとっては新卒採用があることによって、ある程度決まったスケジュールにのっとって就職活動ができるので、他の学生との情報交換がしやすかったり、今何をすべきかが分かりやすいという点はメリットだと思います。 また、企業の側にとっても毎年決まった時期に人材を一定数雇用することができ、卒業したばかりの学生なので自社の社風や方針にそったゼロからの人材育成をしやすいという点がメリットとしてあげられると思います。 |
新卒採用があることによって本来大学4年間は学業をすべき期間であるものが、3年次から就職活動の方が学業よりも優先されるような状況になりやすいです。 そのため、本来身につけるべき知識や教養が不十分になる恐れがある点は問題点としてあげられると思います。 また、企業の側が新卒採用にこだわるあまり、新卒という枠を外れた人材の就職活動が困難になっていて、学生や労働者の人生の選択肢の幅が狭くなり、雇用の流動化という面でも問題点が大きいといわざるをえません。 |