メリット デメリット
再生可能エネルギーである 建設コストが非常に高い
CO2の排出がほぼゼロ 自然環境への影響が大きい
安定した電力供給が可能 住民の立ち退きや移転問題
運用コストが低い 適地が限られている
寿命が長い 干ばつや水不足に弱い
電力の即時供給が可能 長期的なメンテナンスが必要
国内エネルギー自給率の向上 建設期間が非常に長い
発電と水管理の両立が可能 地震や災害リスクに脆弱
地域の雇用・観光資源にもなる 発電効率が立地に依存する
蓄電代わりの揚水発電ができる 気候変動の影響を受けやすい

水力発電のメリット

上の表に出てきた各メリットについてかんたんに解説します。

再生可能エネルギーである

水力発電は水の流れという自然現象を利用して電力を生み出すため、石油や石炭のように有限な資源に頼らずに済みます。水は降雨や雪解けによって自然に循環するため、枯渇する心配がほとんどありません。エネルギーとしての安定供給が見込め、持続可能な社会の実現に貢献できます。特に気候変動対策として再生可能エネルギーの導入が求められている現代において、水力発電は信頼性の高い電源として位置づけられています。また、他の再生可能エネルギーと比べて出力が安定していることも大きな利点です。

CO2の排出がほぼゼロ

水力発電は化石燃料を燃やす工程がないため、運転中に二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しません。これは地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出抑制に非常に有効で、環境負荷の少ない発電方法とされています。火力発電と比べてCO2排出量が大幅に少なく、太陽光や風力と並んでクリーンエネルギーの代表格です。特に日本のようにエネルギーの多くを輸入に依存している国では、自国で環境負荷の少ない電力を生産できる点で水力発電の役割は重要です。将来の脱炭素社会への移行に向けて不可欠な要素といえるでしょう。

安定した電力供給が可能

水力発電は太陽光や風力のように天候や時間帯に大きく左右されることが少なく、比較的安定して発電できるのが特徴です。ダム式の場合、貯水された水を制御することで、必要なときに安定した出力を供給できます。また、季節や時間による変動があっても調整がしやすく、電力需要のピーク時にも対応可能です。発電の出力調整が比較的容易なため、電力網の安定運用にも寄与します。特にベースロード電源としてだけでなく、需給バランスの調整にも活躍する存在です。

運用コストが低い

水力発電所の建設には多額の初期投資が必要ですが、一度完成すればその後の運用・維持にかかるコストは比較的低く抑えられます。燃料を必要とせず、水の流れだけで発電できるため、燃料調達コストがゼロで済むのは大きな利点です。また、機械設備の耐久性が高く、長寿命化が進んでいることで頻繁な部品交換も必要ありません。自動制御装置や遠隔監視システムの導入が進んでおり、人件費も低減できます。結果として、長期的な運用では他の発電方式より経済性に優れた電源といえるでしょう。

寿命が長い

水力発電所は他の発電施設に比べて非常に寿命が長く、50年以上安定して稼働することが可能です。実際に100年以上稼働している発電所も存在し、設備のメンテナンスを適切に行えば非常に長期間にわたって活用できます。このような長寿命の発電施設は、長期的なインフラ投資として優れており、コストの回収期間が長くてもその後の収益化が期待できます。また、地域のインフラとして定着しやすく、災害時にも一定の信頼性を持つ発電所として評価されています。エネルギー政策上の安定性にも寄与する要素です。

電力の即時供給が可能

水力発電は、特にダム式や揚水式の場合、短時間で発電を開始・停止できるという利点があります。電力需要が急増した際にも迅速に対応できるため、ピークカットや緊急時の電力供給に非常に有効です。たとえば、地震などの災害時に電力が途絶えた際、水力発電所は比較的早く復旧し、重要インフラや病院への電力供給を支える役割を果たすことができます。また、再生可能エネルギーの出力変動を調整するための「調整電源」としても有用で、全体の電力系統の安定運用に大きく貢献します。

国内エネルギー自給率の向上

日本はエネルギー資源の多くを海外から輸入していますが、水力発電は国内の河川や降水を利用するため、自国の自然資源だけで電力を賄うことができます。この点は、エネルギー安全保障の観点から非常に重要です。世界的なエネルギー価格の変動や、国際的な供給リスクに左右されずに安定供給を図れるという意味でも、水力発電は戦略的な価値があります。また、山地の多い日本では地形を活かした中小規模の水力発電所の導入も進んでおり、地域主導型のエネルギー供給にもつながっています。

発電と水管理の両立が可能

ダム式の水力発電所は、発電だけでなく治水や農業・工業用水の供給、上水道の安定確保など、さまざまな水管理の役割を兼ねています。たとえば、雨が多い季節には貯水し、少雨時には放流量を調整することで水資源の効率的な活用が可能です。さらに、洪水時にはダムが緩衝帯の役割を果たして下流の氾濫を防ぎます。これらの機能を発電と同時に実現できるため、複合的なインフラとしての価値が高く、地域にとって多目的で有益な施設となります。

地域の雇用・観光資源にもなる

水力発電所やダムは、その建設・維持・運営の過程で地域に雇用を生み出します。特に過疎地や山間部においては、数少ない産業基盤として地域経済を支える存在です。また、ダム湖や周辺施設は観光資源として活用されることも多く、展望台、資料館、ダムカードなどの取り組みによって観光客を呼び込む効果もあります。地域イベントや防災教育の拠点となることもあり、単なるインフラを超えた地域コミュニティとの結びつきが期待できます。

蓄電代わりの揚水発電ができる

水力発電の中でも揚水発電は、夜間など電力需要が少ない時間帯に余剰電力を使って水を上の貯水池に汲み上げ、必要なときに下流に放水して発電する仕組みです。これは大規模な「電力の貯金箱」として機能し、電力需給の変動に対する柔軟な対応が可能になります。特に太陽光や風力のような出力が不安定な再生可能エネルギーとの組み合わせに最適であり、電力系統の安定化に大きく寄与します。大規模なエネルギー貯蔵技術として、今後の脱炭素社会において重要な役割を果たすと期待されています。

水力発電のデメリット

上の表に出てきた各デメリットについてかんたんに解説します。

建設コストが非常に高い

水力発電所、特にダムを伴う施設の建設には、数百億円以上の巨額な初期投資が必要になります。土地の整備、コンクリート構造物、発電設備、送電インフラなど、膨大な工事が伴うためです。さらに環境影響評価や住民説明、用地買収などの調整に時間とコストがかかり、計画段階から完成まで10年以上を要するケースも珍しくありません。このため、事業化に慎重な検討が求められます。初期投資の大きさから、採算が取れるまでに非常に長い期間がかかることも事業リスクとなります。

自然環境への影響が大きい

ダムの建設は川の流れをせき止めて貯水池を形成するため、周囲の生態系に多大な影響を及ぼします。特に魚類の回遊ルートを遮断し、生物多様性を損なう要因となることが多く報告されています。また、森林伐採による動植物の生息地の喪失、水質の悪化、温度変化なども懸念材料です。下流では水流が弱くなることで、堆積物の移動が減少し、河川環境が変化します。このような環境破壊が、地域住民や自然保護団体からの強い反対を受ける要因になることもあります。

住民の立ち退きや移転問題

大規模なダム建設では、貯水池に水をためるために周辺の集落や農地が水没するケースがあり、そこに住む住民には立ち退きや移転が求められます。このため、地域住民との間で強い対立や反発が生じることもあります。特に、古くからの集落や文化的価値のある場所が水没する場合、単なる生活環境の移転以上に大きな損失となります。補償や再定住支援が行われるとはいえ、元の暮らしを取り戻すことは容易ではなく、社会的・心理的な負担も非常に大きいと言えます。

適地が限られている

水力発電には落差と流量が必要不可欠であるため、発電に適した地形や水系を持つ場所は限られています。日本国内でもすでに多くの有望な地点は開発済みで、新たな大規模水力発電所を建設できる候補地は非常に少なくなっています。また、残された適地が環境保全区域や観光地である場合、開発のハードルはさらに高くなります。これにより、新規導入の余地が少ないという制約があり、再生可能エネルギーとしての拡大には限界があると指摘されています。

干ばつや水不足に弱い

水力発電は水をエネルギー源としているため、降水量が少ない年や長期的な干ばつが続くと、発電能力が著しく低下するリスクがあります。特に地球温暖化の影響で気候が不安定になっており、今後さらに水資源の確保が難しくなることも懸念されます。発電所の立地によっては、水不足により発電を一時停止せざるを得ない状況もありえます。水の安定供給に依存している点で、他の発電方式に比べて自然条件の変化に対して脆弱であるという弱点があります。

長期的なメンテナンスが必要

水力発電所は一度建設すれば長寿命で運用できるものの、維持管理には継続的な努力が必要です。特にダムには堆砂という課題があり、長年にわたって土砂がたまり続けると貯水容量が減少し、発電効率が低下します。これを防ぐには定期的な浚渫(しゅんせつ)作業が必要ですが、費用と時間がかかるため、実施が難しい場合もあります。また、水門やタービンなどの機械設備の摩耗や故障にも対応する必要があり、トータルでの運用コストは軽視できません。

建設期間が非常に長い

水力発電所の建設には長い時間がかかります。環境影響評価、住民との協議、用地取得、地盤調査、設計・工事など、段階ごとに時間を要するため、10年以上かかるプロジェクトも一般的です。そのため、短期的な電力不足への対応策としては不向きであり、即効性を求められる電力供給計画には使いづらい側面があります。また、計画の途中で情勢が変化した場合に、コストや需要とのズレが発生し、採算性に悪影響を及ぼすリスクもあります。

地震や災害リスクに脆弱

日本は地震大国であり、ダムが地震の影響で損壊するリスクは常に存在します。大規模な地震が発生し、ダムが決壊すれば、下流の地域に壊滅的な被害が及ぶ可能性があり、安全性の確保は極めて重要です。また、集中豪雨や土砂崩れによって貯水池が埋まる、または施設が損傷するリスクも高く、自然災害への対応力が問われます。設計段階での厳格な耐震性評価や、非常時の放流体制の整備が必要不可欠です。

発電効率が立地に依存する

水力発電の効率は、立地条件によって大きく左右されます。流量が豊富で落差が大きければ高効率の発電が可能ですが、そうでない場合は出力が極めて小さくなります。そのため、同じ設備投資をしても地域によって得られる電力量には大きな差が出ます。また、小規模な発電ではコストに見合った効果が得られにくく、事業採算性を確保するためには入念な事前調査が必要です。立地の選定が発電事業の成否を大きく左右する要因となります。

気候変動の影響を受けやすい

気候変動によって降雨パターンが変化すると、水力発電にも直接的な影響が生じます。例えば、豪雨が集中する地域と干ばつが続く地域の偏りが強まることで、水資源の不安定さが増し、従来のように安定した発電が難しくなる可能性があります。また、温暖化により積雪量が減少すると、春先の雪解け水に頼っていた発電所では出力の低下が予想されます。このように、長期的な気象の変化が発電量に影響するため、将来のエネルギー政策においてはリスク管理が必要です。

みんなの意見

賛成意見 反対意見
私は水力発電に肯定的です。2011年の大震災の影響で東京電力の原子力発電所が爆発した事故を受け、以降はエコ・エネルギーに対して大きく賛成するようになりました。

水力発電は、原子力発電のように一度トラブル・事故が起きたら二度と元に戻らないような状況に陥ることも、火力発電のような慢性的な大気汚染もありません。

加えて水力発電は火力発電のようにいたずらに燃料を使い込むということもなく、とてもコストが優しくなっています。
水力発電のネックは、やはり原子力発電や火力発電のように膨大な電力を生産することが出来ないということです。

もしも、水力発電の電力生産量が原子力発電や火力発電よりも多ければ、自ずとクリーンエネルギーでコストも安価である水力発電がメインの発電方法として選択されているでしょう。

ですが、水力発電単体では、とても日本全土の電力をカバーすることは出来ないのです。

また、水力発電を建設する際に、多くの土地を開発しなければならないという環境問題の側面もあります。水力発電を可能とする場所は、主に自然が豊かな場所です。

森林・河川をはじめとして、そこに住む生き物たちを含めた生態系が開発によって著しく損なわれてしまうという深刻な問題があるのです。
水力発電の良いところは発電自体がクリーンだという点です。火力発電のように二酸化炭素を排出しませんし、原発のようなやっかいな問題もありません。また再生可能エネルギーのなかでは唯一安定的に電力を供給することもできます。

日本のように山がたくさんあって、雨がたくさん降る国にとっては重要な電源です。それ以外に水力発電所はダムに設置されますが、ダムにはそれ以外にも洪水防止や、治水など様々な役割を持っているのも良い点です。
一方で良くない点もたくさんあります。まずコストがかかることです。山に建設しますので、資材の運搬やダムを造るのにわざわざ道を造ったりすることもあります。

また環境破壊も深刻です。地形や水の流れが変わってしまうので周辺の環境が変化してしまうこともあります。

このため周辺住民と合意がなかなか得られず、建設まで数十年かかることもありますし、反対によって建設が中止されることもあります。発電自体はクリーンですけれど、建設はとても困難を伴うんですね。
水力発電は圧倒的にクリーンなエネルギーのため、よいものだと考えます。

火力発電のように二酸化炭素を排出して、地球温暖化に影響を与えることもありませんし、原子力発電のように万が一の事故の際に取り返しのつかない環境汚染を引き起こすこともありません。

どこにでもある水という資源を使えるので、設置自体にも面倒がなく、簡単な設備を作るだけで発電を行うこともできるので、発展途上国でも扱いやすい発電方法になります。
水力発電は発電時に環境破壊を引き起こさないものの、その形式によっては発電所の建設時に大きな環境破壊を引き起こし得るのが良くないと考えるところです。

水を高いところから低いところへ落とす際に生じるエネルギーで発電するので、主にダムなどの設備に付帯していることがあります。

しかし、ダムの建設自体がもともとその地にあった自然を破壊せねばならず、更にダムによって水の流れが変わり、下流の環境破壊を引き起こす恐れもあります。
水力発電の良い点と言えば、自然の力による無理のない発電方法をあげます。最も古くからある発電方法の仕組みは簡単で、簡易な物であり、知識と道具さえあればすぐに発電の為の設備を作る事も可能です。

つまりはまだ、電力の供給がなされていない、未開の地においての、まず初めの発電施設として、始動し始める事も可能です。技術を伝えるという面においても最も簡単であると思います。

また、火力発電のように地球温暖化に加担する事もない環境に優しい発電方法だと思います。
水力発電で大きな電力の産生を必要とする場合、水源を確保する為の水瓶を築く必要があります。

その場合、現在の地形から、人工的な水瓶にと本来の地形を変化させなければならない場合も多くあります。そのため、新しい施設周辺の生態系への影響は多大な物となります。

また、中には計画的な地域の水没を免れない場合もあります。自然の生態系を一度壊してしまうと、簡単には元に戻す事はできません。こうした意味で水力発電にも問題はあると考えます。